第二十四話 二日目終了!
「あ、その…………」
はぁぁあ、もうさすがに黙ってるわけにもいかないよな……。
「俺、魔法を使えなくて……」
「魔法を使えない!?」
ヤグワル団長だけでなく、対戦相手の男、試験官の二人も驚いていた。
「どういうことだ? お前、ドラヴァルアの人間ではないのか?」
「い、いえ! ドラヴァルアの人間です! 正真正銘カカニア生まれのドラヴァルア国民です!」
「では、なぜ……」
ヤグワル団長は意味が分からないといった顔。そらそうだよな。俺ですら分からないんだから。
「分からないんです……、俺、子供のときから今までずっと魔法は使えなくて」
「…………、うーむ、理由はよく分からんが、まあなんだ、元気出せ」
あからさまにがっくりしていたからか、慰められてしまった。
「お前、よくそれで竜騎士になろうなんて思ったな」
「うぐっ」
対戦相手の男が睨みながら言う。まあ普通そう思いますよね。
「ど、どうしてもなりたかったから……」
や、ヤバい、泣きそう……。
「まあ、とりあえずお前たちの対戦はこれで終了だ。控えの間に戻れ」
ヤグワル団長は見兼ねたのか苦笑しながら言った。
「こいつこのまま試験受けさせるんですか!?」
男がヤグワル団長に詰め寄る。うぅ、魔法が使えないことを隠していた上に弱っちいのもバレているはず。もう明日の試験を待たずに不合格なんだろうか……。
「まあ、魔法が使えないことを隠していたのは問題だが、しかしお前に勝ったしな」
ニッとヤグワル団長は笑った。えっ。
「はぁ!? あんなの勝ったことにならないでしょ!! 俺をコケさせただけじゃないか!!」
「コケさせただけだが、もしそのまま剣を振られていたら、お前は死んでたぞ?」
「うっ」
「ま、そういうことだ。このまま試験続行! お前らは戻れ!」
「あ、あ、あ、ありがとうございます!!」
ハハ、とヤグワル団長は笑い、手をヒラヒラと振った。
あぁぁあ、良かったぁぁあ!! 思わず走って控えの間へと戻る。
「リュシュ!? どうしたの!?」
「え!?」
息を切らし戻って来た俺を見ながらアンニーナは驚愕の顔。フェイまで驚いた顔をしていた。
「え?」
「なに泣いてんの!?」
「え?」
顔に触れると思ってた以上にダバダバと涙で頬が濡れていた。
うおっ! はずっ!!
慌てて服の袖で涙を拭う。恥ずかし過ぎる!!
「な、なんかあったの?」
アンニーナが恐る恐る聞いて来る。
「あ、ごめん、なんでもない、というか、その……」
模擬戦内容とともにその後のやり取りも二人に報告をした。その途中で対戦相手の男も戻って来たが、すっかり嫌われたようで思い切り睨まれた後は一切こちらを見ようともしなかった。
はぁぁあ、俺、嫌われてばかりだな……。
「うーん、まあとりあえず良かった? のよね?」
「うん、とりあえずは試験続行させてもらえて良かった」
「うん」
アンニーナとフェイも喜んでくれている。他の受験者には嫌われてばっかりだけど、二人は友達でいてくれているのが有り難い。
試験続行、本当に良かった……、このまま不合格になってたらしばらく立ち直れなかっただろうな。
ホッとし、落ち着いたところで食事をしながらフェイの模擬戦を待った。
フェイはこれまた涼し気な顔で戻ってきた。なんか……凄いやつだな……。
「二日目、これで終了だ! 模擬戦は今日で終了! 明日は竜の騎乗試験だ!!」
ヤグワル団長がそう叫ぶと、控えの間の受験者たちから「おぉ!」と興奮の声が漏れた。
「明日の騎乗試験後に合否の判定があるからな! 遅れずに来いよ! では、解散!!」
こうして二日目も無事に? 終了したのだった。
一日目と同じくアンニーナとフェイと三人で帰る道中、ドラゴン騎乗について話し合った。
「ドラゴン騎乗が一番緊張するわね」
「うん、そうだね」
「え? なんで?」
ドラゴン騎乗より俺はどちらかと言えば、模擬戦のほうが緊張した。なんせ弱っちいから。しかもドラゴンは子供のころに一度だけだが乗ったことがあるし……。
「なんで、って当たり前じゃない! ドラゴンなんて乗ったことないし! 馬とは違うのよ!?」
「え、あぁ、まあそうだな!」
そ、そっか、普通ドラゴンになんか乗ったことないか、そらそうだよな。ドラゴンはほぼ王都にしかいないしな。騎乗出来るのも竜騎士だけだし。そう考えたら俺ってめちゃくちゃラッキーなんじゃ。
「なによ、ニヤニヤして気持ち悪いわね」
うぐっ、酷い言われよう……。いや、でもニヤニヤしてたのか、ヤバい、気を付けよう。
「リュシュはドラゴンに慣れてそうだよね」
「えっ!? なんで!?」
フェイに言われ明らかに挙動不審になってしまった。
「え、なんでって、だってキーアがいるじゃないか」
「あ、あぁ!! キーアね! そうそう! キーアいるし! 俺、ドラゴン慣れてる!」
いや、なんか変な片言!! 二人とも変な顔で見てるじゃん! 言いたいけど、あのドラゴンと約束したしなぁ、誰にも言うなって言われたし……。うん、俺とあの白いドラゴンとの約束だもんな。
「でもついにドラゴンに乗れるなんて夢みたいだ! 早く乗りたいよ!」
二人は怪訝な顔をしていたが、その言葉を聞き同じく頷いた。
「うん、楽しみ!」
「僕も楽しみだよ」
その日、店へと帰り再びディアンに報告をすると、三日目のために早めに就寝をした。けど、やっぱり興奮してあまり眠れなかったんだけどね、アハハ。
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