明日死ぬ君に、愛を囁く

香月 樹

#1 憧れの先輩に告白するんだ!

「ごめん、僕HIVだから」


大好きだった先輩に告白した返事がこれだった。

「ゲイじゃないから」とか「君の事、好きじゃない」とかでは無く「HIVだから」だった。


告白でいっぱいいっぱいだった俺は、


「それでも良いので付き合って下さい」


と思わず返した。


え???


先輩は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていたが、暫く考えてから、


「なら、良いよ。」


と言った。


やっっったーーーーー!


OKして貰えた事で、俺は有頂天になっていた。

そのせいで、とても重要な「HIV」だという事を認識できてなかった。


「先輩、それじゃまた明日!」


俺は満面の笑みで両手を頭上に拡げ、先輩にバイバイしてから家路に着いた。

先輩は照れた顔をしながら、小さくバイバイしてくれた。


先輩カッケーのに、こういうとこ可愛いな。マジ神!!!


浮かれ気分で家に着いてから、時間が経つにつれ段々落ち着きを取り戻してくると、

先輩の言った事を思い出して顔が青くなって来た。


え?先輩、AIDSって言ってた?やべ、俺SEXしたら伝染うつるんじゃねぇ?

まだピチピチの20歳なのに、プラトニックとかやだ!!!


頭の中をグルグルグルグル色んな考えが回っていて、ちっともまとまらなかった。


そもそもAIDSって事は、先輩もゲイだった?

それより、生でやりまくってたから伝染うつったって事?

そりゃもう良い年だし、童貞って事は無いとは思ってたけど、

・・・なんか嫌だーーーーーっ!


(うーーーー、このままだと今日は眠れないな。)


よし、と思い立ったようにスマホを手にした。

行きつけのゲイバーの飲み友達に話を聞こうと思ったのだ。


(確かその辺詳しかったはず。。。)


何回かのコール音の後、

ガチャっと電話を取る音と「もしもし?」という声が聞こえて来た。

電話の相手は2つ歳上の医学部生だ。


「もしもし?あのさ、AIDSの人とはSEXしちゃダメなの?」


「は?」


電話の向こうからは、突然何言ってんの?と言いたげな声が返って来た。

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