第52話 ビッグタイトルは夢のまた夢
ささやかな文学賞はいただいたことがある。
中学生の頃、読書感想文が書きたくて先生が書く人を探していた時、自分からやりたいと手を挙げた。中身がどうと言うのではなく、その熱意だけ。書きたいと言う者もいなかった驚きからか、先生が作文評価に丸をくれた。
それできっと作文が好きになった。通信簿に丸が付くってその頃の私には凄いことだった。
それで、そっち系の少女になり、投稿雑誌を見つけてそこに応募した。
今は無くなってしまった。はないちもんめという投稿雑誌に「太陽様のお宝」と言う童話を初めて書いて送った。
これがビギナーズラックか佳作に入って紙面に載った。作品は載らないけど名前だけ…
人生に陽が射した瞬間。これで生きていこうと中学二年の時決めた。
それからコツコツと作品を書いては送った。はや、約束された道がある気がして、迷いなく送った。
多分、それが最初で最後の勘違い。その後は、間違いさえ起こらなくて、陽のあたる人生は待てど暮らせど訪れず、どんなに書いても採用されないまま、登竜門は、依然遠いところにある。もともと無かったのか、まだその途中なのか。
当時から華々しさを感じた詩とメルヘンに送るのは気後れした、そっちに送っていたならどうだっただろう、もっとアグレッシブにやってみたら門は開いたんだろうか。
好きな文章を書いて、田舎に籠もって、野菜でも作りながらのんきに暮らすのが夢だった。
ただ一つの夢。未だ結実を見ない、唯一の夢。
書いて書いて出版した本が二冊。契約期限を終えて箱詰になって帰って来た。その数の多さに呆然とする。
もうやっても仕方ないか、と思いながらまた書きたくなる。
原稿がたまって本にしたくなる。宗教にははまらないけど、おかしなものにはまってしまった。書くのが好きという…
多くの人に読んでもらうにはどうしたら良いのか未だにわからないまま書きたくて書いている。引っ込み思案の家大好き人間は、友を持たず。ネットワークを持たず。
夢は程遠い。人間は相当な人との関わりがない限り事は成せない事にガンガンと突き当たって灰になりかけている。
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