第43話 身近な鳥たち

 私の住んでいる田舎には野鳥がたくさん生息している。残念にも未だにお目にかかったことはないがカワセミも何処かにいるらしい。

 細身な体を優雅に羽ばたかせて飛ぶ白鷺。翼が大き過ぎてバッサバッサと凄まじい勢いで迫力の飛びを見せる青鷺。そして雄の尾羽が実に美しい雉。春の一時期田植え前の田んぼに群れて餌をついばむ雁。

 雉もたくさん住んでいるが滅多に姿を見せない。日頃は藪の中に暮らしている。田んぼの真ん中でゆったりと餌をついばんだりはしないから、その姿を遠目に見つける事も出来ない。

 野鳥なのだから、鳴かなきゃみつからないはずなのに、甲高くケーンケーンと鳴く。突然、田園の静けさをつんざくばかりに鳴くもんだから、ゆるい私のセンサーまで反応して、隠れて住んでるいであろう住処を見つけ出したい気にさせる。

 まさに雉は絵に描いたようにケーンケーンと鳴く。鳴かずば撃たれまいとは良く言った。ある時期、そうまでして自己アピールしたいという事なのだろうか?住処はある程度解っている。その近くで雄雌二羽の雉を見つけると繁殖しているのが嬉しくてだんだん無くなっていく雑木を何とか残せないかと、少しくらいの資金なら供出して買いたい気持ちにさせる。そのくらい雑木林は減っている。

 植木で名高いこの街にはあちこちの畑に出荷を待つ中低木群がもこもこっと植えられていて、そこは神社の境内のような森となり、雉の格好の生息地になっている。

 雉という鳥は飛ばない。飛んだのを見たことがないだけで、本当は飛ぶのかも知れない。大きく羽を広げて羽ばたいているのを確認したことはない。ニワトリみたいにあるいはバッタのように、超低空飛行で目的地まで一気に放物線を描いて移動する。

運転中に車より少し高いくらいのところをパタパタパタパタと横切って行くので。当たった事はないけれど、当たりそうで恐ろしい。

 もちろん、時には目の前を走り抜ける時もある。地面を這って…

 きっとあわてん坊で臆病で、人騒がせなタイプなんだろうと推測する。

 年に一度、幸運なら二度くらいお目にかかれれば嬉しい。いかにも田舎に住んでいる醍醐味のような気がして、良い事がありそうな気がする。

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