月比呂うさ子のつれづれ日記
@wakumo
第1話 ハッピーセットなる和紙絵
友達の奈緒ちゃんが「騙されたと思って買ってみない」と声のトーンを落としてささやいた。まさか、この奈緒ちゃんがマガイモノをつかまされるとも思えないし何事?と一瞬首を傾げたけれど、そこは奈緒ちゃん。しっかり者と我が家では認識されていて、不合理なものに踊らされるはずはなく、ねずみ講なんかにハマるわけもない。この話は聞いても大丈夫と世間話しを楽しんだ。
「ハッピーセット?」それは、ハンバーガーのバリューセットでもなく、浮かれた玩具でもない。由緒正しい和紙で出来た合わせ絵。とでも言おうか…販売元は和紙で有名な美濃に店を構える美濃和紙店だそうだ。
二枚の絵の一枚は「花鳥」そしてもう一枚は「平安絵巻」この二枚の図柄がセットになって幸福を呼び、不幸を吸うという合わせ技の一対。いつの頃からこの和紙絵は商売繁盛、家内安全と、方々から問い合わせが来るようになって口込みで広がったらしい。
ちよっと遠慮がちに夫にその話をしてみると、即答で購入が決まり、騙されたと思って2セット買った。1セットは引越し前の昔の家に、1セットは今の家に。
後日夫は「このセットを買ってから不幸じゃなくなった気がする」とベットの上でしみじみと感想を漏らした。
昔から人を疑わない善良な市民の我が夫は、大抵のことに駄目と言ったことがない。今回のこのハッピーセットも私の話を聞くや直ぐ買おうと言った。値段を聞かずに買えと言った夫に感心するも、買えない値段なら私が買おうなんて言わないと思ったのだろう。
感想のあと、「もう2枚子供の家にも買ってくれ」と言ったんだから、その霊験あらたかなる和紙絵の神通力に相当傾いている気がする。
ハッピーセットなる和紙絵を購入しようと思ったとき、友達のささやきに頷ける自分が幸せだなと思い、それだけで実は満足だった。もし、この和紙絵が幸福を呼び寄せるものだとしたらそれもまた幸せなことだと思う。
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