#13 王都へ至る術

さて、どうしたものかな。。。


魔王は例の川辺に寝そべりながら青空を見上げ、物思いに耽っていた。

暖かさが心地よくて時折睡魔が襲ってくるが、

おっとイカンと頬を軽くピシャピシャ叩きながら眠気を払っていた。


残る問題である「王都までの馬車をどうするか」だ。


馬車で1日ほどの距離であるから、普通に歩いても2・3日程で着くのだろうが、

いかんせん現在の魔王は7歳の人族の子供である。


魔力で多少身体を強化できたとしても限度があるし、

そもそも人族の体は腹が減るし、疲れというものが溜まる。


折角あの店から持ち出した食料が、王都に着く頃には無くなっているのだ。

食料がすぐに調達できれば良いが、あまり頑丈とは言えない子供の体だし無理はしたくない。


(余り大きな魔力を使ったり長時間使ったりすると、気付かれる恐れがあるしな。。。)


魔力で物を動かせるので、その要領で王都まで飛んでいくという選択肢もあるが、

自分を殺したあの魔眼の女の正体がわからない限り、余り魔力の痕跡を残すのは避けたいのだ。


(首謀者があの女とは限らないし、単独の犯行とも限らないしな。

少しくらい慎重な方が丁度いいだろう。。。)


いざという時以外、魔力は極力使わないようにしよう!

と心に決めた辺りで、ザワザワと町の中心部が騒がしくなってきたのに気付いた。

どうやら人が集まり、数名が喋りながら何かを始めたようだった。


何事かと思い、気配を断ちながらその場所まで行ってみたが、声の主は王都から来た憲兵たちだった。

そして、憲兵が集まっていたのは例の店があった場所だった。


憲兵たちは、昨夜発生した事件の検証を行っていたのだ。


(そうだ!王都から来た憲兵たちなら、また王都へ帰るだろう。それに便乗しよう。)


憲兵たちは恐らく各々が馬に騎乗して帰るだろうが、

ある程度の人数になれば通常は食料等の荷物を運ぶ輜重兵しちょうへいが居る。

この人数なら、荷物を運ぶために馬車も1乗くらいはあるに違いない。


(そうと決まれば・・・)


魔王は憲兵たちがいつ王都に帰るのか、こっそりと情報を集める事にした。


勿論事件の首謀者である自分が姿を現す訳にはいかない。

気配を断ちながら憲兵たちや周りの町民の会話を盗み聞くのだ。


「おい、明日には帰るんだからな。急いで現状の把握と、目撃者の証言をとっておけよ。」

「それにしても、まさか調査に来た店が吹き飛ぶなんてな。」

「でもそのお陰で、事故の調査という名目で今回はじっくりと立入調査もできるんだからな。」


暫く話を聞いていると色々とわかった。


なるほど、どうやらあの店主よほど評判が悪いようだな。


それに王都にいる権力者と繋がりがあるようだし、

弱者への暴力沙汰だけではなく、裏でいろいろとやらかしているようだ。


恐らく多くの苦情や通報があって、王都にいる憲兵を駆り出さざるを得なかったのだろうな。

今回の事で全て露見してゴミを一層してくれると良いが。。。


目下の目的であった憲兵たちが王都へ帰る日もわかったので、魔王はまた川辺へ戻る事にした。


明日になったら町の中心部まで行って、憲兵たちが泊まっていそうなところを物色しよう。

そしてこっそりと馬車の幌の上か、荷物に紛れて王都を目指す事にしよう。

食料を積んだ馬車だったら、少し頂戴して当面の食糧を補充しよう。


そう考えているうちに、ポカポカ陽気と心地よい風のせいで、

陽の高いうちからすっかり寝入ってしまった。

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