#6 謀略

魔国では、今の魔王が長い間その座に就いていた。


魔族はとても分かりやすい。力こそ全てなのだ。

魔界。その中央には魔王の住む王城がそびえ立っている。


王城はゴツゴツとした岩でできた大きな山の頂上に建てられており、

歩いて上る事は容易ではない。


その王城のある岩山から少し離れた町にある小さな宿屋に、

魔王に不満のある魔族の代表者が集まり、密談を交わしていた。


恐らくはかなりの力を持つであろう4名の魔族たちが、テーブルを挟み言葉を交わしていた。

テーブルには1本の蝋燭が灯り、部屋の灯りはその蝋燭のみだった。


「やはり今の魔王様には死んで頂くのが良いであろう。」


全身を黒いマントで覆った老年の男が言った。

顔はフードで覆われていて、蝋燭の灯り程度ではよく見えない


「そうだな。しかし、問題はどうやって殺すかだ。。。」


蝋燭を挟んで向かいにいる骸骨が骨をカタカタ鳴らしながら言った。

片方の目には黒い眼帯をしている隻眼の骸骨だ。


骸骨姿の魔族は、死んだ生き物が白骨化し、魔族化したものが多い。

そのため、一部の例外を除き、人型の魔族は元人間、動物型の魔族は元動物である事が多い。


恐らくこの骸骨も元は人間だろう。

生前片目を無くしたのか、骸骨となった今でも眼帯をしているのだ。

恰好から、生前は海賊船の船長だったと推測される。


色々な意見が出ていたが、どれも良い案とは言えなかった。


「それなら私に考えがあるわ。」


骸骨の右手に座る女は暫く考え込んでいたが、何か思い付いたように言った。


「私の魔眼を使えばたとえ魔王様であってもその時はただの人間。

当たりさえすれば普通の剣で殺せるわ。ただ問題は・・・」


女は魔眼の女だった。金色の髪を持ち、美しい顔をしている。

その赤い目は、ゆらゆらと炎のように光って見えた。

軽微ながら鎧を纏っている事から、遠距離よりも近距離が得意な戦闘タイプであろう。


「ただの人間になるとは言え、魔王様の力を考えると簡単に攻撃が当たるとは思えないの。

魔眼を使っている間、私はそちらに集中するためまともに剣をふるえないし。。。」


そう言った魔眼の女の言葉に、向かいの影が応えた。

そこだけが漆黒の闇になっていて、向こう側にあるはずの壁が見えない。影自体が本体なのだ。


「いや、魔王様の事だ。相手が人間であれば自ずから剣をその身に受けよう。

あのお方は今、平和主義者に成り下がったのだ。人間相手であれば尚更だ。

わざと剣を受け、何をしても無駄だと諭すのではないだろうか。」


「なるほど。確かにそうであるな。であれば、魔族の者よりも人間が剣を向けた方が良いな。

憑りついて事を起こせば魔力も隠せる。それなら魔族の者とはそうそうばれないだろう。」


フードの男が言った。


こうして、人族が行う生贄の儀式に便乗し、魔王を殺害するという計画が出来上がった。

それがあの出来事の真相だった。

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