ちょっぴり甘い宿屋さん

ゆめる

アーニーと色気漂うお姉さん




 ◇



 とある世界の少年が大人に近づく物語───


 辛いことは沢山あるけど───


 ちょっぴり甘い出来事───


 大人になるのは年齢だけなのか───


 宿屋の小さな一室で───


 窓を開けて外を眺める───


 街中の活気が目を癒し───


 今日も密かに景色を眺め───


 騒がしさを少しだけ楽しむ───


 今日はいつもと少しだけ違う───


 隣の窓から声をかけられた───



 ◇



「あら、お隣さんがこんなに可愛い男の子だったなんて……」


「あ、どうも……アーニーっていいます」


「アーニーくんね。私はフラウ、よろしくね。見たところ成人して街に出てきたってところかしら?初々しくてとっても可愛いわね」


「あ、ありがとうございます。フラウさんもすごく綺麗ですね」


「嬉しいことを言ってくれるじゃないの〜。おばさんだけどまだまだ働けるってことね!」


「フラウさんの職業はなんですか?」


「うーん……ちょっと刺激が強くて言いにくいけど……、私は娼婦をやってるの」


 しょ、娼婦!?

 確かに色気がすごいし、これぞ大人の女性って理想像を体現してるな。

 でもなんで安い宿屋で暮らしてるんだろう……。

 水浴びも満足に出来ないから不便なはず。

 フラウさんほどの綺麗な女性だからこそ、なにか事情があるのかもしれないな。

 ちょっとだけ聞いてみてもいいよね……?


「フラウさんはどうしてこの宿屋に?綺麗だからたくさん稼いでると思ってるんだけど……」


「あら、ありがとう。でも綺麗なせいで苦労してしまっているのよね」


「……?」


「ちょうど1年前かなぁ、変な貴族に目をつけられて、愛妾になれって強引に迫ってきたのよ。毎度毎度断り続けても全く諦めてくれなかったわ。そんなある日、私をどうにか振り向かせるために、夫と娘が誘拐されてしまったの」


「……中々のクズっぷりな貴族ですね」


「ええ、でも当時は気が動転して貴族に怪我を負わさせてしまったの。それがきっかけで夫と娘は奴隷として売られてしまい……、家族を取り戻すためにお金が沢山必要なの」


「そうだったんですね。」


「……あら、もうこんな時間。そろそろお仕事だからまた明日ね、アーニーくん」


「はい、頑張ってください」


「ええ、ありがとう」


 隣の窓が閉まり、ひとりぼっちになった。

 フラウさん、すごく綺麗な人だったなぁ……。

 また明日も話せるかな?



 ◇



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