第9話 お城のお金ってどうなっているの?
朝食後、新しい使用人を募集する為の詳細をバートンと練っていった。
確認するとやはりメイドはデイジー1人だし、コックはあのイケメン1人だった。
庭師はデイジーの父親トムと、話す事のできないオリバーのみ。
彼が不憫だから...という理由でオリバーを雇ったらしい。
(あら?コレットはどこにいるのかしら?)
とちらりと思ったが、質問する機会を失ってしまった。
(まあいいわ、あとで聞きましょう)
後は不定期に期間限定で雇ったり、ボランティアを募ったりして手を借りながら、屋敷の管理に務めていたらしい。
最低あとメイドは10人、事務員を3人、庭師も5人、厨房も3人は雇ってくれとバートンに頼んだ。
仕事をルーティンでもきちんとこなせる人間を雇うようにと伝える。
忠誠心も大事だが、今はお給金に見合った仕事を遂行できる人間が必要だ。
(全ての人間がデイジーやバートンの様に無償の精神で働ける人ばかりではないから…)
募集要項の詳細をバートンと決めると、厨房のコックの選抜はイケメンに任せた方が良いだろうという事になった。
あとで厨房へ行き、コックに相談しようということになった。
「じゃあ、次は帳簿ね」
「……こちらでございます」
わたしが帳簿のチェックを始めようとすると、何故かバートンの言葉に元気がない。
忠臣バートンの態度が気になったが、わたしがここ数年の帳簿の収支を確認したところ城からの
寧ろ多額の収入とともに差っ引かれる経費とやらが問題だった。
「なあに?この莫大な経費って…」
王宮から運ばれる金品やお金が経費という形でかなりピンハネされている。
「――書類をもう一度見せて」
書面を確認すると、なんと担当はお金に汚くて有名な貴族の役人ではないか。
そのやり口のえげつなさもわたしはお父様から聞いて知っている。
発覚すれば大変な、詐欺紛いの事もやっているらしい。
書類を再度見直した途端わたしは怒りがこみ上げて来て、思わず椅子から立ち上った。
ピンハネが始まったのは何と10年も前から――丁度ジョシュア様のお母様がお亡くなりになってからだった。
書類の細かい処までは少年のジョシュア様には、分からなかったのだろう。
13歳の少年が悲しみに沈んでいるのをいいことに上手く丸め込んだに違いない。
バートンは後で気が付いたのだろう。
――この王宮からの送金の金額の不当性を。
+++++++++++++++++
「この事、ジョシュア様は知って…」
バートンは更に項垂れてしまった。
「――――いるのね…」
「どうしようもないのです」
ジョシュア様にはもう後ろ立ては無く、継承権も無きに等しい。
抗議は何度か最初のうちは貴族本人や王宮にもしていた。
書面による抗議も行った。
しかし何故か、すべてその途中で有耶無耶になってしまう。
ジョシュア様もバートンも悟った。
利用価値のない第13王子の為に、誰がその貴族に対抗するべく、
骨を折るというのか。
母が既に亡くなった後、母方の縁者の貴族に連絡を取ったが時すでに遅し、没落し離散状態であった。
王宮にも、身内にも頼れる味方は居ない――身を以て知った。
「…分かったわ。…わたしにその件は預けてくれる?」
わたしはバートンに頼んで、ここ10年の王宮からの様々な支度金や生活保証金に関する書類をかき集めるように頼んだ。
それからヘイストン侯爵家に遣いを送る準備も。
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「さて、…後は税金対策とこの城の産業ね……」
一つは昨日の時点で考えている。
――そうトリュフである。
希少価値の高い――金と同様に取引されるものだから、ある程度は城の財政を潤してくれるに違いない。
(ただ季節や自然のものだから、確実性が無いのよね…)
腕を組みうーんうーんと考えていると、バートンが
「奥様…。少し休憩なさっては…」
と声をかけてくれた。
「そうね…」
「それでは、お茶の支度を…」
バートンが言いかけたのと同時にわたしは立ち上がっていた。
「それじゃあ、気分転換に」
「――お城を探検させて頂戴♡」
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