サンタ・テレサ
Kohr.435円
第1話 工場と少女
────── 私は誰から生まれたのかわからない。名前も忘れた。なんでここにいるのか分からない。ずーと心も空も曇り空。
ベネズエラ、サンタ・テレサにある黒い家。その中には少女が沢山いる。中も、外も周りも銃で武装している人達に囲まれている。この場所は言わゆる「赤ちゃん工場」。女性を妊娠させて赤ちゃんを産ませる工場ではある。ただ、故意的ではなく、買春目的の男たちが来てえっちなことをする。そして、妊娠させる。
ここにいる少女はみんなギャングの焼印と、数字の焼印が押してある。
そう、ここはギャングの巣窟だ。ギャングの名は「サーバル」だ。
ある日、名も無き少女は工場から身体を出した。たまに監視役の人が居ないことがある。この工場を1歩外へ出たからと言って撃たれることはない。なぜなら逃げられないと分かっているから。
その少女の数字は「10003」だ。焼印はみんなと一緒、黒いジャガーのような焼印。タトゥーでいう筋彫りのデザインだ。
少女は外へ出ると、この日は雨だった。少女はニヤつく。少女は雨が好き。雨ならこのボロボロの服、身体から穢れを洗い流してくれる。そう考えた。
少女は雨に撃たれる。すると、すぐに男がやってきた。2人だ。一人は全身黒い服を纏った男性だ。いや老人と言うべきか、話し方や顔、手に皺がある。
君、凄く濡れている。中に入りたまえ、風邪をひくではないか。
少女は少し戸惑った。その言葉はいままで言われたこと無かったからだ。
老人に連れられ工場内へと一緒に向かう少女。少女の小さい背中には老人の掌が添えてある。生暖かい。
工場内に入ると、後ろから着いてきた男性が話す。
エドワーズさん、この子が例の?
そうだ。君は10003番だね?
はい、そうです。
焼印を見せてくれるかね?
少女は言われるがままに肩にある焼印を見せる。数字とセットで同じ場所に入れてある。
ほう、間違いないな。
と、エドワーズは言う。
決めた、この子を買う! 目はクリクリで金色、髪はブラウン。細め。何歳ですか?
12歳だ。
11歳か、いい年齢だ。いくらだ?
1080ドルだ。
※1080ドルは日本円で15万円。
いい値段ですね。買います。
少女はなんの話しをしているのかわからなかった。
いいだろう。先に1080ドルを。
と言われ、男性はお金をエドワーズに渡す。
すると突然少女の手を引いた。引いたのはエドワーズではなく、1080ドルを渡した若めの男性だった。
少女の目を見てこう言った、「お前は俺の物だ、こい」。
そういいながら手を引っ張った。少女は抵抗なんてせずにそのまま流れる。
ここからが本当の地獄の始まりだった。今も十分地獄だが、それ以上の地獄だ。血の池地獄から針地獄に行くかのような地獄さを味合うのだった。
少女は男性に買われ、その男性の家へと連れて行かれた。
少女はどんな暮らしをさせられるのか。少女はこの時はなにも考えず、ただ、この男性に連れられ身を任せるしかなかった。
サンタ・テレサ Kohr.435円 @katumata
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