神狩り

七星北斗(化物)

1.獣の神一刀

 《何故、神を崇めるのか?


 崇めたところで、奴らは奪うだけだ。


 神を名乗るそれらを正しさと呼ぶならば


 醜く邪悪そのものだ。


 この世界に神なんていらない》


 サイラン村には神様がいる。


 獣の神、ライーラだ。黒い体毛の体長二メートルを越える狼であり、人の言葉を理解し、話す高い知能を持つ。


 ライーラは、サイラン村近くの洞窟に住み、村の住民に月毎に貢ぎ物を要求した。


【子供が美味しい。雄だろうか、雌だろうか?】


 この日がくるのを腹を空かせて、今か今かと待っていた。


 未成熟なハリのある悲鳴も、美味しさを高めるスパイスだ。


【若い生娘が柔らかく、歯を肉に沈めた時の血も美味しい】


 しかし、そこに現れたのは年若き少年だった。


 少しガッカリしながらも、子供の雄も美味しいことに違いないと思い直す。


「こっちへこい」


 ライーラが呼ぶと、少年は子供とは思えない速さで接近してくる。


 驚きこそしたが、子供にしては速い程度の動きだ。


「小僧なんのつもりだ?」


 無言の少年に対し怒りを覚えたライーラは、少年の小さな体に、自らの巨体をぶつけて気絶させてしまおうと動き出す。


 だが、一度冷静になる。少年は片腕を自らの背後に隠して見えないようにしている。


 何か武器を持っているな。一度減速し、少年に隙を見せる。


 その瞬間、少年は背後から短刀で切りつけてきた。


 それをライーラは余裕を持って躱す。


 遅い。やはり子供だな。


 首を噛み千切り、すぐに殺してしまおう。そして食事が済んだ後は、サイラン村の住人を何人か見せしめで食い殺す。


 神である私に反逆したのだから、神罰というものだ。


 少年の首に大きく鋭い牙が突き立てる寸前で、ポタッと血が流れて痛みが走る。


 何だ?


 痛みのする場所に小さな牙が突き立てられていた。


 私に痛みを与えたものの正体は子狼だ。


 どこから現れた?焦りから動揺が生まれる。しかし私に痛みを与えた神敵へ、強い怒りがそれを消した。


 振り払おうと首を強く振る。


 その瞬間、首が飛んだ。


 少年はライーラが首を振るタイミングに合わせて、首に向かって刀で一刀した。


 首を動かす力を利用して、体長二メートルを越える獣の神ライーラの首を見事に断ったのだ。


 ライーラは、一体何が起きたのかわからなかった。


「ナイス、ムー」


 そういって少年は、子狼の頭を撫でた。


 子狼は少年に撫でられたことに、尻尾を振って喜びを表し、ウォーンと大きく吠えて勝鬨を上げる。


「大丈夫ですか?」


 その時、この場所に似つかわしくない、あどけなさの残る少女の声が洞窟内に響いた。

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神狩り 七星北斗(化物) @sitiseihokuto

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