77番地の住人と宇宙からの来訪者
有栖川 黎
何故、ミーナに頼まなかったのか?
大都会の一等地だと言うのに人が入店しない。
「店長ここ77番地でラッキーセブンですよね……なんでいつもお客さんが来ないんですか?」
ハートに染み入る気持ちいい言葉だ。私はマゾになってしまったのだろうかと一瞬考えた。
しかし、何故客が入店しないのか店長の私にも分からない。
これはきっと個人事業主であれば一度は経験するかもしれない事柄であろう。
そして、根本的な原因としてこの店の看板娘であるミーナがその原因の構成要素なのは言うまでもない。
起きるのは昼過ぎであって、店の手伝いなど一切しないダメダメな娘なのだ。
おかげで店の客を捌くことは出来るはずもなく、売り上げは開店した時から低いままだ。
この店の店主である私だが、もう一つ悩みの種がある。
それが自称宇宙人を名乗る来訪者なのだ。
この時点でもう意味が分からない。
自称宇宙人の少女とミーナの関係性は深く追い出しずらいので放置していたが、その様子を見た客はすっかり姿を見せなくなった。
翌朝、ミーナが珍しく朝早くから起きていた。
窓から街並みを見ていたがどうにも落ち着かない様子であった。
ミーナは言った。
「店長、ちょっと出かけてくる」
「わかった」
私はミーナの後をつけることにした。
すると、少し離れた十字の交差点で自称宇宙人の少女がどこからか現れミーナと合流をした。
何かを話している様子だったが、距離が離れていたためによく聞こえなかった。
人が多かったのでミーナたちを見失ってしまい、仕方なくよく行く階段坂のところへ行くと人が倒れていた。
近づくと知らない人ではあったが私は話し掛けた。
「大丈夫ですか?」
「………………」
返答はなかった。
倒れた者は起き上がり、閉じていた目を見開き言う。
「なぜミーナに頼まなかった......」
倒れていた者はそう言って、私がくしゃみをして目を閉じている間に姿を消した。
後ろを振り返ると宅配業者のノエルと言う者が立っており、こちらを見ていた。
距離は30メートルほど離れている。
「店長さん、こんなところで何してるの?」
「ミーナ達を探してるんだ…見なかった?」
「見てないね」
「分かった、ありがとう」
ノエルは颯爽と荷物を抱えて街に消えていった。
私は先日、自称宇宙人の調査をある者にお願いをしていた。
ついでなので調査事務所へ行ってようか。
事務所の前まで来るとそこにはミーナ達が居た。
ミーナにある封書を渡そうとしたが、結局思いとどまりその場を後にした。
結果として、その封書は信頼のおけるノエルに後日、渡すことにした。
そういえば、あのなぜミーナに頼まなかったとはどういう事なんだ?
そんな疑問を浮かべながら私はとりあえず店に戻った。
一応この店は古書街にある喫茶店兼本屋でちょっとした配送業も営んでいる。
もしかしたら、ミーナに一任している宅配関係で何か問題があったのかもしれない。
そう考えた私はミーナの帰りを店の外で待つことにした。
77番地の住人と宇宙からの来訪者 有栖川 黎 @Asaka_ray
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