プロローグ

 ある日のこと。豪奢で超巨大なクルーズ船のデッキで、望杉香峯子もちすぎかねこは抜群のプロポーションを惜しみなくさらけ出しながら(さらす相手はこの場にいない)ビーチチェアに身体を預けている。

 日に照らされて煌めくブロンドの縦ロールでラムネ瓶を掴みながら見上げるのは、空から降りまくるミサイルのきたねえ花火だった。

 「せっかくのクルーズ船に新しい水着。なんで愛斗さんはいませんの?」

 見せる相手がいなければ水着を着る意味なんてない! と、香峯子は襲い来る爆風をものともせず船内へと続く階段を下りていく。

「えっ⁉ もう戻るんですかお嬢様!」

 香峯子の背後からミサイルを迎撃していた香峯子のボディガードのアンドロイドのギャル、望杉五美もちすぎいつみの驚いた声が届く。

「愛斗さんに見せなければ水着でいる意味なんてありませんわ!」

 縦ロールに持つラムネを一気に飲み干した香峯子は、ラムネ瓶を飛来するミサイル目掛けて投擲。音速を超えた速度のラムネ瓶がミサイルを迎撃する。

 まったくもう! という態度で階段を下りる香峯子の後を五美は慌てて追いかける。ちなみに五美はいつもの制服姿で、やたらとぬいぐるみなどがぶら下がっている学校の鞄を持っている。

「すぐ戻りますわ!」

「あっ、じゃー待ってますね」

 香峯子を見送りながらも、五美は次々と飛来するミサイル(たまに牡蠣売りおじさん)を迎撃していく。香峯子が船内に戻り約五分が経過、なぜか制服姿に着替えた香峯子が現れた。

「しぶといですわね、まだ続いていますの?」

「明日は晴れの予報ですけどねー」

 眉を顰めながら空を見上げる香峯子に言葉を返しながらチュロスを香峯子に差し出す。

 ――ピシッ。

 二人がチュロスに意識を向けた直後。上空からガラスにひびが入るような音が聞こえた。

 「ありゃ? なんかやばそーな音しましたね」

 「ええ全く」

 二人が空を見上げると、空に亀裂が入っていた。その事実を認識した瞬間、亀裂から二つの人影が香峯子達の乗るクルーズ船へと落ちてくる。鉄がひしゃげる音が一瞬響いた。

「よーす、見に行きましょーか?」

「ですわね」

 いつの間にかミサイルは止んでおり、カリッカリッという音だけが今はその場を満たす。

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