陰キャのワイ。配信始めたら、フォロワー数と共に魔力が増えた
なんかイイ感じになりたい
1章 陰キャデビュー
第1話
半年前くらいだった。
急にみんな魔法が使えるようになった。
僕も両親も、友達も、知らないおじいさんも、赤ちゃんまでも。赤ちゃんは言いすぎた、ごめんなさい。
クラスのイケメン男子が授業中にあくびをすると同時に口から炎を噴出して、先生のカツラを焼いてしまったのが、僕が初めて見た魔法だった。
魔法が使えるようになったからすごく人生が変わるとか、世界が一変してしまったとか、毎晩夢の中で俺つえーな妄想をしていたのだけど、実際はそんなことなかった。
世界は確かに変わったけど、僕はあまり変わらなかった。
クラスではやっぱり陰キャの立場のままだった。
不思議なもので、陽キャで彼女もいるようなイケメンたちはかっこいい魔法を使えたりする。
僕は虐められこそしないが、当然彼女などいない。そして、使えるようになった魔法もぱっとしないものだった。
うむ。世の中なかなかに世知辛いということを、この歳で学べたのは良かったかもしれない。
クラスでの評価は中の下というくらいの立ち位置の僕は、魔法が出現し、ダンジョンも現れ、新しい職業と法律が誕生したこの世界を満喫できずにいた。
全く変わっていない。
世界が変わる前から、僕は何も変わっていないことに気づいた。
変わらず登下校を繰り返し、部活には所属せず、テストはいつも平均的。
全く変わらない日々に少し飽き飽きしていたのかもしれない。
そして、僕は決意した。
世界が歩み寄ってくれて変化してくれたのだ。ならば、僕も少しだけ変化してみようと。
珍しくやる気に満ち溢れ、休日にアカウントを作り、動画投稿サイトデビューすることに決めたのだった。
やることは、魔法の講座である。
僕は魔力が低く、大した魔法使いではない。
世の中の魔法エリートたちが赴く地、ダンジョンとは一生縁がないだろう。
魔法自体にも優劣があるが、何よりこの世界は魔力が肝心である。
魔力数=魔法使いとしての強さと言ってもいいほどに。
僕の魔力は9800。平均が1万なので、そのちょっと下くらいだ。
なんとも僕らしい。
使う魔法は戦闘向きではなく、魔力も低い。
僕が配信する内容は、便利系動画になるだろう。
かっこよくもないし、ダンジョンなんかで到底役に立つものでもない。
ただし、日常でちょっとだけ役に立つものを。
こうしてアカウント完成させて、僕は配信者デビューをした。
まずは動画を投稿してフォロワーを増やしてから、いずれはライブ配信なんかもやってみたい。
人が集まってくれるといいなー、なんて願望を抱きながら。
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