6-8話 発動と同調
ハイネ先輩とルイシアーノは大丈夫なのかという心配はあるが、人の心配をしている余裕はまだない。何せこちらは精霊同士の相性改善、いったいどうやればいいのか想像がつかない。
向こうは人間同士の相性問題なわけだからまだ何とかなるはず。……無理では?と冷静な部分の私がツッコミを入れるが、そちらは放置してアザレア先輩に向き直る。
「わたくしも他の精霊と息を合わせる機会はそうなくて。なので相性が悪いというのは初めての経験になります。」
アザレア先輩ほどの人でもそうなのですか。そう口にすれば眉をさげて微笑まれる。
「わたくしが精霊と契約をしたのが三年の頃ですから。学術はさておき精霊様との経歴は実のところ、
「え、そうなのですか?」
「ええ。ですからそちらについては専門家にお願いするとしましょう。」
先輩の言葉に口を開けていれば、彼女の瞳がついと動く。視線を追うように首を動かせば、そこにいた存在に納得の声が出た。
「成程、カーマイン先生のことですね。」
学院を卒業して以来この学院にいるという彼は、この中で最もソルディアの生徒を見てきたはずだ。これまでにも精霊の相性が合わない例を識っていても可笑しくはない。
「理論としての精霊学ならワタシよりもウォン教諭の方が専門だが……まあいい。どちらにしても指導はするつもりだったからな。まずは基本の話からだ。
精霊は属性によって大別され、意義によって細分化される。完全に反発することは極稀だが、キミたちのように幾らか相性が悪い……という例も過去にはある。」
手にしていた本を開けば、幻惑魔法が発動する。灯るは火水土風の四つの光。それぞれが更に細かな色彩、塊となり、虹の円環となって回る光景が幻想として描かれた。
「重要なのは、あくまでそれらは“精霊の”相性の悪さであり、“キミたちの”魔力の相性の悪さではないという点だ。」
「それがどう違うんですか?」
「大いに違う。」
「以前クアンタ―ルには話したか。このセレモニカの儀において、精霊の力は自らの魔力と
フォンは
「あら、
「嗚呼、無論
「あの、すみません。
既に納得しているアザレア先輩とカーマイン先生の間で話が進みそうになるのを、挙手をして留める。
「ううん……簡単に申し上げるのなら、
「フォンの言葉通りだ。
精霊の力を操ると聞いて、先ほどの練習の光景がよぎる。揺れる大地と生まれいずる若芽。再び自然と手が上がった。
「先生、一つ質問です。ルイシアーノ様が先ほど見せていたのは、どちらになるのでしょう。」
「
「以前見せて頂いたハイネの
二人の会話に内心で頷く。なるほど、先天性の才能なら納得でもある。悔しくないといえば嘘になるが。
「だが、精霊の相性が誰とも悪くなかったとはいえ、
「まあ確かに、精霊の力を使うたびにあちこちで花が咲いたら大変ですものね。」
花咲か
「今年の終わりにはお前にも
「はい!」
ひとまずの課題は見えた。ならば後は越えるだけ。なるべく前向きに考えながらも、合間合間に視線があさっての方向を行くことだけは許してほしい。
精霊間の相性は一歩間違えたら事故にもつながるからと、離れたところで練習をしている二人。
貴族にありがちな
──あの二人、本当に大丈夫だろうか。
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