クラファンから始まる異世界冒険譚

クラファンおじさん

第一章 エーファ王国編 「異世界転移」

2022年11月のとある日

俺こと三久冬馬は、行きつけのカフェで一心不乱にタイピングをしていた。


「あー、ここの文章まだ分かりづらいなー」


我が社(といっても一人社長)の新商品「"全自動"泡立つカップ」を発売すべく

かれこれ一ヶ月、新商品のプロジェクトページを作成している。

零細メーカーとしてはありがたいことに、

この世の中には、クラウドファンディングというシステムが存在し、

ここで商品を生産するための金銭を援助してくれる支援者を募ることができる。

もちろん無償で支援してもらえる訳ではなく、支援してくれた人には

リターンとして「泡立つカップ」をお届けするのだ。


できるだけ多くの資金を集めるには、この商品のプロジェクトページの

見せ方が非常に大事だ。どんなにいい商品でも、魅力が伝わらなければ意味がない。


そんな訳でその作業も終盤に差し掛かり、もう間も無くで終了まで辿り着いた。


「おし、と。誤字もないし、これでいいかな」


一度プロジェクトページを公開してしまうと、文章の修正はしばらくできない。

なので入念に何度も内容の確認を行った。


「OK。問題なし。それじゃ、公開するサイトを選ぼう」


俺がよく愛用しているクラウドファンディングサイトは、国内で有数の会社だ。この会社は複数のクラファンサイトを運営していて、商品のジャンルによって使い分けることで、より効果的に支援者を集めることができる。

飲食なら「FOOD mania」、復興支援なら「revival」というように。


「えーと、今回もプロダクト系に強い"monoco"だよなー」


そう思いながら、カーソルをプルダウンして、商品を出品するサイトを選んでいたのだが・・・・・


「ん? "MONDO"? はじめて見るな、このサイト」


これまで見かけたことのないこの"MONDO"は、新たに立ち上げられたサイトのようだ。詳しく調べてみるが、このサイトの説明ページが見当たらない。

ググってみるが、まったく情報がヒットしない。


「なんだろ、もしかしてバグ?」


とりあえず、ものは試しと選んでみる。

するとポップアップウィンドウが立ち上がり、こう表示された

「今なら手数料が5%です!」


「まじかっ!これは惹かれるなぁ。」


なぜならここの会社系列のクラファンで出品すると、獲得した資金から手数料が20%引かれるからである。

それが5%で済むのなら、とても魅力的だ。。


「前評判がわからないまま挑戦するのは正直ギャンブラーだけど、時にはチャレンジは必要だよなー」


考えようによっては商品を出品するライバルが少ないわけだし、商品露出は増えるはず。
大手のクラファンサイトだから、それなりに集客も見込めるだろうと

ものは試しと"MONDO"を選んでみることにした。


「MONDO選んだまま、出品・・と」


するとプロジェクトページを公開した瞬間、ノートパソコンの画面から

目がくらむ程の眩い閃光が、俺を包みこむ。

体が浮き上がり、光の中へ吸い込まれる。

一瞬、メガネがずり落ちるカフェのマスターと目があったような気がする。


何も抗うことはできずに、俺はゆっくりと意識を落とした。





目が覚めると、そこは草原が一面に広がる広大な場面だった。

大の字に寝転がった状態で目が覚めたようだ。

のそりと上半身を起き上がり、頭をぼりぼりと搔きながら辺りを見回す。


「・・・ここ、どこ??」


何が起きたか全く記憶がない・・・


「行きつけのカフェで仕事していたはずなんだけど」


とてもそんな所にいたとは思えない程の、大自然のど真ん中にいる。

途方に暮れるとはまさにこのことだ。

とりあえず辺りを見回すと、車が並んで二台通れる幅の道が目についた。

とても整備された道路とは言えず、土造りで凹凸も目立つ。


「とりあえず歩くか? 誰かにまずは道を聞かないと。しかし本当に意味がわからない。まるで神隠しみたいだ。」


ついさっきまで、都心の一角にあるカフェで仕事をしていたのだから、そう思うのも仕方がない。


とぼとぼ道を歩く。陽射しはあるが気温はちょうどいい。体感的に20度ぐらいかな?
ジャケットとTシャツを着た装いには丁度いい気温だ。


ただただ変わらぬ景色を見回しながら歩くこと1時間(体感的に)程すると、背後からガラガラと何かを引くような車輪の音がする。

振り向けばそこには1頭の馬に引かれた、馬車が近づいてきていた。


「え?馬車?」


あまりの非日常の光景に、思わず立ち止まってしまう。

馬車が横を通りすぎると、その後を男女集団が4名程歩いている。

その服装や顔を見る限り、日本人ではない。

出で立ちは中世の冒険家のようで、彼らの腰には剣と思われるような武器を携えている者もいる。


なんとも言えない冷や汗が、頬を走る。


彼らは怪訝な表情で俺を見ると、その中の一人が声をかけてきた。


「一人なのか? ずいぶんと軽装だが、旅人か?」


「き、気づいたらこの辺りで倒れてまして。」


頭が追いつかない中、どもりながら答えた。


じっと見つめてくる彼に

ここがどこなのか、とりあえず尋ねてみた。


「ここは、クク村とネルソン街の間だな。ここを道なりにまっすぐ進めばネルソン街だよ。我々は護衛をしながらそこに向かっている」


聞いたことのない街だ。とても日本とは思えない。

それに彼らは西洋人にしか見えない。

まさか、これは、嫌な予感がして背筋に滝のような汗が走る。


「ここは日本ではないのですか?」

「ニホン?聞いたことのない地名だな。ここはエーファ王国だよ」


ガクリと膝を地につける。


アカン、これは絶対に異世界や・・・


途方にくれてひざまずく俺を心配して、

俺の肩を支えて立ち上がらせてくれた。


「迷い人のようだな。とりあえずここで一人は危ないから、ネルソン街まで一緒に同行するか?」

その言葉に力なく頷くのだった。




しばらくして落ち着きを取り戻し、

馬車の後ろを冒険者に同行させてもらって歩いている。

歩きながら彼らと自己紹介を交わした。


先程親切にも声をかけてくれた彼は

ノエル 背丈は170cm程 金髪短髪で青い瞳の爽やかイケメンだ

体格はいかにも細マッチョという感じか

年齢は19歳だそうだ 年齢に見合わずしっかりしている

このパーティのリーダーをしているそうだ


好奇心に満ちた目で俺を見ている彼は

ライ 背丈は165cm程 栗色の茶髪でブラウンの瞳をしている。

癖毛っぽい髪型をしていて、やはり細マッチョという感じだ

年齢もノエルと同じ19歳 人懐こい印象だ


少しツンケンしてそうな彼女は

レイラ 背丈は長身でノエルと変わらないぐらい

濃色の蒼い髪色だ 日本では秋葉原でしか見かけない髪色だな

腰までかかる髪を一つ結びでまとめている

年齢は16歳 あまり口数は多くない(警戒されてるから?)


最後に法衣に身を包む彼女は

セイラ 背丈は1番小柄で160cm程度 金髪のボブカットで

金色の瞳をしている。 聞けばレイラの妹ということだ。

年齢は14歳 愛想のいい笑顔をしている(お姉さんと対照的)


彼らは"疾風の狼"というパーティ名で活動している冒険者だという

やはり異世界なのか、ネーミングが厨二的だ・・・


「俺は、三久冬馬っていうんだ。見ての通り、かなりおじさんだけど」

「ミク・トーマ? ミクは貴族なのか?」

ノエルがそう聞くと

「(? そうか、性と名が別れていると貴族と思われるのか)」


「いや、貴族ではなく平民だよ。名だけの、ミクトーマだ」

「なるほど、了解した。しかしおじさんというが、俺らよりちょっと年上ぐらいだろ?」

こんな寂れた35歳のおじさんに嬉しいことを言ってくれる。ちょっと照れながら

「そうかな?」なんて答えてしまったよ。

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