38.披露宴 ♡ 世界平和 → ハッピーエンド!
『めでたい!』『めでたい!!』
『今日は世界で一番の
『なんといっても――【勇者様】と【魔王様】がご結婚なされるのだ!!』
ふたりの結婚のニュースは、文字通り世界中に通達された。
最初は様々な声があがった。
反感。否定。不安。懸念。批判。
どちらかといえば、圧倒的にネガティブな意見が多かったが――
魔王と勇者が公の場にふたりで現れ、お互いに『心の底から愛し合っている』ことが皆に伝われば、一斉に世界は祝福ムードへと変わった。
(ほかにもふたりの仲について【聖女】が後押しをしてくれたのも大きかった)
『争いが絶えなかった』
『ふたつの種族の』
『まさしく架け橋だ!』
『これで』『世界は』『平和になる――!』
そんなふうに世間の声は。
いつしか歓喜と祝福に満ちあふれるものへと変わった。
『おふたりの幸せという垣根を越えて』
『この結婚は世界にとっても幸福をもたらす!』
そして今日がその結婚披露宴の当日。
世の中の熱は、まさしく最高潮に達していた。
『めでたい!』『めでたい!!』
『今日は世界で一番の
♡ ♡ ♡
『やめるときも、すこやかなるときも』
『ふたりは互いを
『――
そう神父に告げられて。
「ああ――誓おう」
「誓う、わ」
タキシード姿の魔王と、ウエディングドレス姿の勇者が言った。
他ならぬその魔王を筆頭に、魔族と人間族が協力をしながら
ふたりの披露宴は、まさしくその街で行われていた。
『勇者様ー!』『魔王様ーっ!』
『おめでとうございます!!』
種族の垣根を越えて招待された数多の人々が。
ふたりの結婚を祝福してくれている。
「とても美しい光景ですわね」
と式に列席中の聖女が言った。
「魔族ですとか、人間族ですとか。過去の
「ん――きっと、せかいは、こうあるべきだった。いまも、むかしも」
と、同じく列席していた淫魔が言った。
「そうですわね。すこし大げさにも聞こえるかもしれませんが――そもそも、このおふたり自体が【魔王】と【勇者】という大げさな肩書きの方々なんですもの。これを期に、きっと世界は〝より良い方向〟へと変わっていくことでしょう」
『それでは両者ともに、誓いのキスを――』
壇上で神父が促した。
「「…………」」
魔王と勇者は互いを向き合う。
魔王はゆっくりと、勇者の被っていたヴェールを上にあげた。
「シルルカ――」
「エデレット――」
互いに名前を呼び合って。
勇者と魔王は。
世界が見ている前で――キスをした。
『『ワアアアアアア――』』
まわりからは盛大な拍手と歓声があがった。
(これからきっと、あたしたちには――たくさんの〝ハジメテのこと〟が訪れるかもしれないわ)
勇者は祝福の景色の
(なにせ、あたしたちは人間族と魔族で結ばれたハジメテの夫婦になるんだもの)
周囲の歓声は鳴り止まない。
勇者と魔王のキスをみて、まさに種族も関係なく『きゃあきゃあ』と盛り上がっている。
(だけどきっと、エデレットとならどんなことだって乗り越えていけるわ。なんてったって魔王と勇者なんていう〝世界で一番高い
勇者の心の中の言葉は、いつの間にか現実に漏れていた。
「うん、そうよ――どんな困難だって、あたしたちだったら――」
「ぬ――なにか言ったか?」
そう聞き返す鈍感な魔王に対して。
勇者はすこしだけつんとそっぽを向いて。
「ううん、べつに――〝大好き〟って、言ったのよ」
「――っ!」
魔王は目を見開いて、照れくさそうに頬をかいてから。
言った。
「そうか。余も――愛しているぞ。シルルカ。これからもよろしく頼む」
「うんっ。よろしくね、エデレット」
かららん。ころろん。
教会の鐘が、どこまでも澄んだ空に高らかに鳴り響く中で。
シルルカは。
これから
きっと『平和な世界』を創っていこうと――
そう決めた。
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ここまでお読みいただき本当にありがとうございます〜!
いよいよ次回が最終話となります……!
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