36.落下 ♡ 許可 → 世界滅亡!?
上空にて。
勇者と魔王という、どこまでも両極端な存在どうしが結ばれたあと。
「……って、そういえば! あたしたち、
言葉どおり、勇者たちは地面に向かって落下していた。
「ぬ――そうだな」
焦る勇者と対照的に。
相変わらず、のほほんと脳天気な声で魔王は言う。
「な、何を落ち着いてるのよっ! あたしたち、このままだと地面に――」
「なあに、問題はない」と魔王は断言した。「また
「あ、そっか……!」
大火山で魔王が
「さっきもすぐに駆けつけてくれたものね」
勇者はすこし安堵したような息を漏らしてつづける。
「それがあったから、あんたは最初から全然焦ってなかったのね」
「ああ。余が何の策もなく、あのような魔法を空でぶっ放すわけがなかろう――ぬ?」
魔王は
「笛がないな」
「……え?」
「ふむ――どうやら失くしたようだ」
と魔王はあっさり言った。
「はいいいいいいいいい!?」
と勇者は思い切り叫んだ。
「な、なにやってるのよーーーーー!」
勇者は魔王の胸に掴みかかって訴える。
「ほらっ! もう地上があんなに近くに――このままじゃ激突しちゃう……!」
「ぬ――仕方がないな」
「ほ、他にも何か方法があるの……?」
魔王はこくりと頷いた。
「勇者よ――
そう言って指先に例の【黒く濃密な
「え? ……ま、まさか」
勇者はごくりと唾を飲み込む。
「ああ――思い切り地面に
「やっぱり
勇者は目を回しながら叫んだ。
「その方法が成功するかは分からないけど……着地点には〝街〟があるのよ!? このままじゃ、やっぱり【本当の魔王】みたいに町を破壊することになっちゃう……」
眉をひそめて困惑していたら。
唐突に目の前に、【
『勇者様っ!』
「え……モエネ! クウルスもっ!」
空に浮かんだ画面には、聖女と淫魔が映っていた。
「ふたひとも、ひとまず無事で良かったわ……!」
『ええ。クウルスさんのお陰ですわ』と画面の中で聖女が言う。『勇者様たちは――大丈夫、ではなさそうですわね』
勇者はぶんぶんと首を振って答える。
「お陰様でこっちは現在進行形で命の危機よ!」
焦る勇者に対して。
聖女はきりりと眉毛をあげ、胸を叩いて言った。
『ご安心ください! モエネたちを襲ってきた
「え? ……ってことは」
聖女はそこですこし得意げにして、
『ええ――滅びたってなんの問題もございませんっ』
などと。
まったくもって聖女らしからぬことを断言した。
『あいにくその枢機卿派の人々も招集によりほとんどが出払っています。残党はすこしはいるかもしれませんが――むしろ
ぶつり。
そこで画面が乱れてウインドウが消えた。
「エデレット! 聞いた?」
こくり。魔王は頷いた。
「魔王が聖教国に超絶魔法をぶちこむなんて、
勇者は意を決したように叫んだ。
魔王は片方の口角をあげて。
「わかった――他ならぬ勇者の命令なら、仕方がないな」
指先に浮いていた黒球を。
以前と同じように巨大化させて――
空の
「いっけええええええええええええ――!」
勇者の叫び声とともに。魔王は。
空をどこまでも埋め尽くす黒球を。
思い切り地面へと――叩きつけた。
「「――っ!!」」
ずどおおおおおおん。と。
まさしく
黒い魔力は
♡ ♡ ♡
こうして無事に。
魔王は魔王らしく。
――聖教国の一角を滅ぼした。
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