第17話 募集中! 笑顔が絶えない職場です!

「殿下! 殿下! しっかりしてください! 泣くのはまだ早いです!」


 あたたかい腕がボクを抱きしめてくれた。


「だってボクはボクはぁ」

「ゲルドリング伯爵令嬢様がここまで話してくださったは、まだなにか打つ手があるということです!」

「え、そうなの?」


 灰色メガネ……いや。

 マリアンヌは溜息をついた。


「先程、私は言いましたよね。ローゼンクランツ殿下が嫌いだと。

 その理由は既に述べました。

 ですから、あんなのと結婚する気はありません」

「でも、ボクが王太子じゃなくなったら、あいつが――」

「そもそも、あのバカは大いに勘違いしております。

 私が、王太子妃の位ほしさに、あの小才子と結婚する?

 はっ。ばかばかしい。おとといきやがれです!」


 怒ってる。

 あのマリアンヌが怒っている!

 おとといきやがれとか言ってる!


 あ・り・え・な・い!


「で、ですが、王太子の求婚をそでにするなんて出来るはずが」


 マリアンヌはビシッと言い放った。


「私は決めました。オットー殿下。貴方を王にすると」


 ボクは、ポカンとした顔でメガネを見上げた。


 コノメガネハナニヲイッテイルンダ?


 ボクは絶賛『ざまぁ』の最中ですよ?


「私には出来るのです。なぜなら今、この国の政を仕切っているのは私なのですから」

「どゆこと?」「どういうことなんですか?」


 マリアンヌは咳払いをすると


「自分で言うのもなんですが、私は凄く有能なのです。

 殿下だけでなく、国王陛下も王妃殿下も全ての政務を私に丸投げしてるくらいなのですよ」

「ええええええっっ、ボクだけじゃないのっっ!?」


 びっくり。


 ボクのとこに来た書類の山だけでも目が回りそうなのに。

 父上や母上の分まで……きっとすごい書類の山なんだろう!

 どれくらいすごいかはわからんが、とにかくすいごい!

 書類の洪水だ。いや大洪水だ。

 それじゃ学園に通えるわけがない。


「私が処理する方が万事速く正確で優れているので、いつのまにかこうなっていました。

 大臣達や役人達も私に聞いたほうが話が早いので、私に相談して万事を決めております。

 もちろん、いくら私が有能でも一人では無理なので、抜擢した役人や軍人に手伝って貰っております。

 それでも人手が足りないので、庶民からもどしどし集めてます。

 国をよくする素敵な仕事! 笑顔が絶えない職場です!

 老若男女まったく区別しません! 給金よし! 休暇あり! 新年には特別手当も出します!

 今や、私が与えられた離宮は王国の頭脳になっているのです。

 ですから正確さを重んじて申せば、この国の政を仕切っているのは私達です。

 今ここにいるのは、皆、私の同志と呼べる方々ばかりです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る