第14話 ボクはようやく理解した!

「「え?」」

「少々しか知恵が回らないくせに、知恵が回ると思い込んでいる男など害悪です。

 個人としても国としても」

「あいつ、ボクより全然イケメンだぞ!」

「目鼻の出っ張りの高さなど私にはどうでもいいことです。

 アレのやろうとしている事が問題なのです」 


 恐る恐るテレーズが、

「あ、あの……第二王子であるローゼンクランツ殿下をアレというのは不敬ではないのですか?」

「あんなのはヤツとかアレとかガキでいいのです。どうせもうすぐ王族でなくなるので」

「なんで?」「どうしてですか?」


 あいつは『ざまぁ』で、マリアンヌと結婚する役じゃないの?


「アレは王位を継いだら、この国で進んでいる改革を更に進めようとしています。悪い方向に」

「え? 改革っていうのはよくすることだろ? いいことじゃないの?」

「変えればいいというものではないのです」


 パーティの出席者達が一斉にうなずいている。


 どゆこと?


「あのガキは改革の成果で民の暮らし向きがよくなってきたのを機に、大幅な増税をしようとしております」

「それは当然だろ? 民草はボクら王家のため国のために身を粉に――」


 上から舌打ちが聞こえた。


「チッ、これだから腐れ貴族はっ」


 コツコツ。コツコツ。

 妙な音がボクらの前で響く。

 あのマリアンヌが、靴のかかとで床を蹴っているのだ。

 しかも舌打ちまでしてる!


「殿下。もし貴方が民草のひとりであったとすれば、税金があがるのを歓迎しますか?」

「ええと……」


 すいません。払ったことないのでピンときません。

 ボクは隣のテレーズを見た。


「余り歓迎はしません……せっかく暮らし向きがよくなったのに、また逆戻りなら余計に……」

「そうなれば、買い物も減らしますよね? ちょっとした贅沢もしなくなりますよね?」

「は、はい……」

「だけどそれは、ええと、下々のものが贅沢するなんて分不相応だから――おぎゃぁぁぁぁっっ」


 土下座していた手が踏まれてる! 手の甲をグリグリと! えぐりこむように!

 マリアンヌに踏まれている! なじぇなじぇなじぇぇぇぇ?

 ボクの言ってることのどこがっ!? 周り十が言ってることじゃん! ぎぇぇ!


「じゃあなんですか、貴族とかいう奴らが夜ごと酔っ払って騒ぎ回ったり、無駄な贅肉をたくわえたり、街の女の子を金にあかせてさらってオモチャにしたり、登城しても酔っ払ったままで役に立たなかったり、孤児を拾ってきて矢の的にしたり、当然のように袖の下をとったり、バカ息子の罪を金でもみけしたり、使いも食えもしない金銀財宝のコレクションを蓄えるのは分相応だとでも?」

「そ、そうじゃないの!? だ、だってボクらは王族で貴族で選ばれし尊き――ぐがぁぁぁ指が指が指がぁぁぁ」

「お、おやめください! 殿下は知らないし判らないのです! でも、わたしにはお優しい! ほんとうはいい方なのです! 話せば判る方なのに、誰も教えてさしあげなかったのです!」

「ぐがぁぁぁぁぁ! ちぎれるちぎれるぅ」

「では殿下。判るようにお教えてさしあげましょう。

 ローゼンクランツ殿下は、殿下を断罪したのち、テレーズ嬢を、取り巻きが経営している娼館に放り込んで、死ぬまでオモチャにすると発言していたんですよ。

 誰が最初に抱くかを賭けてギルデンスターン達とカード遊びまでしてました。

 ちなみに勝ったのはローゼンクランツ殿下でしたよ」


 ボクは瞬時に理解した。


「な、なんだとっっ!? なんという悪! 許せん! そうか奴らは悪だったのかっっ!

 弟もその回りの貴族どもも悪!」


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