第8話 はい論破。されたほうだけどな!

 ズバッと行くぜ!


「ふふっ。策士策に溺れるとはこのこと! お前は自分がサボり魔の不良! 王妃たる資格のないできそこないと告白したのだっ!」


 決まった!

 どうだ参ったか!

 唇を噛んで泣きながら走り去るがいい!


「私は学園に行く暇がないのです。政治をしているので」


 ボクは、王者のポーズ連発でビシリっと告げてやるのだ。


「はっ。そんなはずはない! お前ごとき婦女が政治に関わるはずなど――」

「殿下は最近、学園から王宮に戻った後、書類に目を通しておりますか?」

「なにをいう。ボクは学園生だ。政治に関わる必要など――」

「一昨年までは書類が用意されていたはずです。例えそれにサインするだけだったとしても」


「いや、そんな記憶はないぞ! ないのだ! な――」


 ボクは、ぽんっと手を叩いた。


「ああっ!」


 言われるまで忘れてたけど、そういえばそーだった。


 確かにボクのところにはサインを待つ書類がいくらか来ていた。

 最初はテキトーにサインをしていたが、だんだん増えてきたので面倒になり放置したっけ。

 だってボクは華麗でセレブな王太子、なんで書類仕事なんてしなくちゃならないんだ? そんなのは下っ端にやらせておけばいいんだ。


 放っておいたらどんどん溜まって目障りになったから、暖炉にでもくべるか庭で庶民の好きだという焼き芋とやらをしてみんとす、と思っていたら。


 ある日突然全部消えた。


 やったー。と思ったよねあの時は。


「現在、あれを処理しているのは私です」

「へ?」

「王妃教育を二年繰り上げて終えた私が、殿下の仕事を代行しているのです。

 年々増える書類を全て私が処理しております。もちろん中身にも目を通して。

 ですから学園になど通っている暇はないのです」


「う、うそだー! 女のお前が――」

「私は王妃教育を終了しておりますので、その知識があります。幸い適性もあったようです。ここにいる王宮務めの方々は、私が書類を処理している事を証言して下さるでしょう。

 もっとも大部分の書類は男女問わずある程度の知恵と適正があり教育さえ受ければ処理できる程度のものですがね」


 メガネの光がテレーズの方を向いた。


「テレーズ嬢。ご納得いただけましたか?

 私が学園に通う時間がないのは、婚約者としての義務以上の仕事をこなしているからなのです」

「は、はい……納得です」


「さて」


 メガネ女は、メガネをぐっとあげるとあらためてボクらを見た。

 ボクの心の奥が、冷たい手で、ぎゅっと掴まれたようだった。

 蛇ににらまれたカエルというのは、こういう気持ちなのかっ。


 先程、マリアンヌに告げられた言葉が耳の奥によみがえってくる。


 死罪、財産没収、追放。

 死罪から罪一等を減じられて、廃嫡、追放といったところでしょう。


「殿下。私がテレーズ嬢を階段から突き飛ばしたという証言をとって来たのは誰ですか?」

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