ep23 決着
爆炎と衝撃による砂埃が治まった後。
二人はその姿を大きく変えていた。
「フフフ……。」
黒いキャットスーツに身を包んだ姿。
“インファイト”による白い煙が立ち昇る姿。
“デスタッチ”で増えた1対の腕。
【孕め我の仔を】による白い蛇の体。
「もはや、怪物だな?」
そういうショコレータも多少ではあるものの、異形とかしていた。
キャソックの下から突き出た長い尻尾。肥大化した脚部。
【もしも私が】を使用した事で変化した姿。
それに加えて周囲にふわふわと浮かぶ光弾が不気味にその体を照らしている。
「フフフ。そういうあなたはとっても素敵……。」
「正直、今ので勝負は決まったと思ったんだがな?」
POWER、一般的なゲームで言う体力がこのゲームには存在しない。
RANKが上がるたびにその回復速度は加速していき、5に至った時点でほとんどの攻撃は数秒から数十秒で治りきってしまう。
だからこそ体の欠損によるPOWER上限の減少が勝負の決め手になりやすいのだから。
だから。
このイベントの中規模拠点確保報酬である“POWER上限の減少”デバフによって減ったPOWER上限では機雷のように使用した“バレットパレット”の一斉爆破を耐えることなどできないと思っていた。
「そういえば、その蛇は【POWERを奪う】んだったか?」
「フフフ。正確に言えば相手のPOWERで蛇を産み出し、その蛇を取り込むことで自身を強化するって所ね?肉体的にも、POWER的にも強化されるとーっても強いアイテムよ。」
「アイテム系のスキルは一度使えばかなりの時間使えなくなるからな。お互いあんまり使わなかったのも、そのステータスの上昇幅で虚を突いて一撃入れるのを狙ってたってわけだ。」
「嫌ね。あなたばかり考えを読めるなんて。まぁ、そうね……フフフ。“テレポート”!」
――ダァン!
巨体となったキャンディナの一撃は素早く、重い。
「でもこれでもう互いの力は変わらない!私の方が早いのだから!私が勝つ!そうでしょう!?」
前回のカンガルースタイルオアンチのせいか、キャンディナは自分も尻尾と2対の腕を器用に使って攻撃してくる。
「それはそうかもなぁ!だがなぁ!」
――エクスチェンジ!
一人の声が響き渡る。
胸に穴をあけ、ギリギリの状態でやってきたシスターがその強力なスキルを発動させる。
「なっ!?」
「待ってたぜシスタァァァァァァ!」
お互いの体の変化が入れ替わる。
キャソックに身を包んだ姿。
“インファイト”による白い煙が立ち昇る姿。
“デスタッチ”で増えた1対の腕。
【孕め我の仔を】による白い蛇の体。
対するキャンディナの体も変化する。
キャットスーツクの下から突き出た長い尻尾。肥大化した脚部。
【もしも私が】を使用した事で変化した姿。
それに加えて周囲にふわふわと浮かぶ光弾が不気味にその体を照らしている。
「推しのため……ですからぁ!」
「まずっ!【微睡む黒羊の
キャンディナの胸元から一枚のメダルが飛び出してくる。
それは谷間に挟むように隠されたメダルだった。
メダルは光り輝き、目の前のショコレータにその光を浴びせる。
――ドサッ。
その光を浴びた途端、ショコレータの体はキャンディナのバフをすべて失い、地面に倒れ伏したのだった。
「今のうちに!消えてもらうわ、シスター!“テレポート”!」
「キャンディナさんは本当に……厳しいなぁ……。」
シスターの後方へ転移したキャンディナがその体に開いた穴に4本の腕を突っ込み、引き裂く。
「これで終わり……なんて、させませんから!“エクスチェンジ!”」
ポリゴンとなって消える前に、再びショコレータとキャンディナのバフを入れ替える。
ショコレータは目覚め、【もしも私が】のバフのみが適用された姿へ。
キャンディナは眠り、すべてのバフを失った状態へ。
「フフフ、“デスタッチ”!さぁ、あとはどちらの気力が上かって話ね!」
ショコレータを無数の腕が地面へ引きずり込むように拘束する。
薄れゆく視界の中でキャンディナは自身の勝利を確信した。
自身のアイテムのスキルによって眠るキャンディナ。
そのキャンディナのスキルで拘束されたショコレータ。
お互いに勝利を確信していた。
キャンディナは眠りに落ちるその瞬間、自身のアイテムの効果であれば十数秒で意識を取り戻せると確信していた。
対するショコレータはキャンディナが“眠った”と言う時点で勝利を確信していた。
「俺の……勝ちだ!【届かない掌】!」
キャソックの胸元から光る指輪。
その光が眠るキャンディナへ届いた瞬間、彼女の顔が苦悶に歪む。
「あとは……この拘束を……!」
もがき続けるショコレータ。
地面から伸びた腕は的確にこちらの関節を抑え起き上がるのを阻止してくる。
【白の軍勢の拠点が制圧されました】
【第二回イベント】
【浮遊島で激突する混沌!ぶつかり合う白と黒!】
【黒の軍勢の勝利です】
【GAME ENDED】
響き渡るアナウンス。
それを拘束からやっとの思いで抜け出したショコレータはそのアナウンスを聞いて敗北を知った。
「流石に……時間をかけすぎたな。」
ここまでモブプレイヤーを軽視しすぎていた。
中規模拠点へ突撃した後そのまま突っかかってくる相手だけを相手していたツケが回ってきたのだ。
白の軍勢は小規模拠点をモブプレイヤー総出で獲得していたのだ。
そうして得た人数的有利を活かして本拠地を攻めた。
「こっちのモブプレイヤーは中規模拠点に結構追いかけてきてたしな……その差が効いたか……。」
中規模拠点の“POWER減少デバフ”の差で勝てるだろうというのは甘い考えだったようだ。
「でもまぁ……今日はここまでだな……。」
ログアウトしながら目を閉じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます