ep16 ウイニングラン

空間が切り替わっていく。

聖域と化していた美しい部屋がボロボロと崩れるかのように元の下水塗れの空間へと変わっていく。


「やっと終わった……もう6時じゃねぇか。」


そしてこの空間へと移動した瞬間、目の前に居たのは7人のプレイヤー。


「……なぁ。俺もう寝たいんだけど?」


わざわざここで待っているあたり、無事に返してくれるとも思えないのだが。


「ハッハッハァ!そう上手くいくとでも思ってんのかよぉ!?」


刀を肩に担ぐように持って、わざわざ足元に焚火を置いてライトアップしているあたり馬鹿なのだろう。


「“女漁りのショコレータ・ショコランティエ”討伐隊隊長!このバンデット・ケーニッヒからは逃げられないぜぇ?」


モブ6人が戦隊もののように左右に並び、各々決めポーズをとっている。

花火替わりなのか左右のマジックガンナーが“インパクト”を上空へ撃ち込む。


――ド!ドゥン!


「ずれてんじゃねぇか!……はぁ。で?俺を倒しに来たと?」


「もちろんだぜ!俺達はレベリングから帰ってきて直ぐにログアウトしてお前の配信を調べた!この下水道ダンジョンも即攻略してやった!何故だかわかるか?」


「……あー、俺が出てくるのを待ってたのか?」


「サブクエをクリアするまで出てこないっていうから待っててやったってのによぉ!」


「まさかお前らずっと待ってたのか……?ここで?」


「5時間もかけてんじゃねぇよクズ野郎!女寄こせコラ!人気も寄こせオラ!」


「それが本音か!……まぁわざわざ待ってたんなら相手はしてやるけどよぉ……。」


そう言ってショコレータは視線を奥の通路へと送る。


「お前らが騒ぐせいで来ちゃったじゃん?」


黒い波が、30センチサイズの奴らが一斉にこの部屋へ向けて走り込んでくるのだった。


「「「「「「「うわぁぁぁぁぁあああぁ!」」」」」」」


「うん、馬鹿じゃん?」


――ガサガサガサガサガサガサ!!!!!!!


7人はかなり奮闘しているが、そちらにばかりかまけていても困る。


――ガゥン!……ガゥン!


「ちょっ!お前、女漁り!卑怯だぞそれ!?」


「うるせぇ、俺は早く寝てぇんだよヴォケ!」


正確に眉間を撃ち抜いていく。


――ガゥン!……ガゥン!


――ガゥン!……ガゥン!


「お、お前ら~……もうおれひとりかよぉ!?」


「あぁ、そうだ。お前もさっさと寝ろ“インパクト”!」


――ドゥン!


ゴキブリどもを踏み潰し、下水道から川へ、スラムへと戻る。

“あば与”の傍でログアウトしていくショコレータはもう眠気が限界だった。

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