(まとめ文)

 ここからは、筆者の想像になるのだが――。 


 少年Aは、幼少時から執拗に続く虐待に両親を恨み、結果的にあのような事件を起こしてしまった。


 それに、過去の未成年者による殺傷事件や、先に挙げた金属バット殺人事件でのホワイトハウスの噂、あるいはネガティヴランドの一件、若者への〝ロック悪影響説〟などが次第に混ざりあい絡みあい、〝殺人音楽テープ〟の〝噂〟が形成されていったのではないだろうか。


 そしてそれを、ある者は戦慄に震え、またある者は面白おかしい都市伝説として、尾ひれをつけて伝播させていったのではないだろうか。



 確たる証拠があるわけではない。



 筆者の想像、あるいは妄想かも知れない。



 しかし――。



 虐待され続けていた少年Aの苦しみや悲しみだけは、本当の、真実のものだったといえるのではないだろうか。


 無論、彼が犯した罪は許されることではない。許されることではないが――だからといって簡単に、単純に断罪してもいいものか、とも思うのである。


 とまれ、〝クトゥルー・ノイズ〟は無かった。


 幻の〝殺人音楽テープ〟は所詮、幻だったのである。

 




 ――と、本来はここで終わるはずだった。


 本稿の入稿間際に、筆者宛てに小包が届いたのだ。


 小包には差出人の名前も住所の記載もなかったが、中を開けると、かなり古びたmaxellのカセット・テープが出てきた。


 そのラベルには、乱雑な字体でこう書かれていた。



 〝THE CTHULHU NOISE by ERICH ZANN〟、と。 


 

 〝エーリッヒ・ツァン〟とは人物名なのか、はたまたバンド名なのか――次号以降も引き続き、筆者はこの話題を追いかけたい。



(『不思議JAPAN』Vol.5 9月5日増刊号より)

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