クトゥルーのノイズ

（本文４-１）B君の証言とひとつの仮説

　埼玉県川口市。

　ある年代にとっては〝キューポラのある街〟としてその名に郷愁を感じるのだろうが（註26）、今や昔ながらの鋳物工場は次々と姿を消し、代わりに巨大なタワーマンションが軒並み建設されていた。

　　（註26）その名に郷愁を感じるの

　　　　　　だろうが――あるいは別

　　　　　　の（特定の）世代にとっ

　　　　　　ては塚本晋也監督作「鉄

　　　　　　男」のロケ地か。

　15年前の話であるし、事件が事件だけに関係者の口も重いと予想していたが、これほどとはと思うぐらい、取材は難航した。それでも何とか、取材に応じてくれる少年Aの小学生時代の友人を探しあてることができた。仮にB君としておこう。B君は、実に興味深い話を語ってくれた。

「〇〇（少年Aの名）って、親に虐待されてたんですよ。幼稚園ぐらいから。父親に２階のベランダから足つかまれて逆さ吊りにされたり、包丁突きつけられて追いかけまわされたり。母親にもタバコの火を押しつけられたりとか」

　虐待？　それはまたどうして？

「さぁ？　わからないです。血もちゃんと繋がってるって言ってましたけどね。〇〇もそれですごい悩んでたみたいで」

　では、両親を殺害した動機は……。

「溜まりに溜まったものが、爆発したんじゃないですか」

　ところで、〝クトゥルー・ノイズ〟って知ってる？