(本文3-3)〝クトゥルー・ノイズ〟を探して

「アメリカのノイズ・バンドなンだけどねぇ、当時起こった未成年者による殺人事件(註24)に自分らの楽曲が影響したって話をでっちあげて、その広まり具合から、いかにメディアが真偽を確かめずに扇情的な報道をしているかを実証してみせた(註25)って話なンだけど……ま、単なる売名って意見もあるけどねぇ」


 なるほど。では、〝クトゥルー・ノイズ〟もメディア批判を意図したものだと?




  註24 当時、起こった未成年者による

     殺人事件――1988年、16歳の少

     年デヴィッド・ブロムが家族4人

     を斧で惨殺した事件。「愛聴して

     いた音楽テープを父親に咎められ

     たから」が殺人の動機だという。

  註25 扇情的な報道をしているかを実

     証してみせた――その顛末は、

     1989年にコラージュ・アルバム

     『HELTER STUPID』

     として作品化された。




「いや、そういう意味じゃなくて、でっちあげ、って意味」


 ということは――デマ?


「いや、でも……そうとも断言できないンだよねぇ。ノイズって特殊なジャンルだしさぁ。インディーズというか、アマチュア・ミュージシャンが多くて、自主流通限定数十枚とかいうのもザラなンだわ。世間的に知られていないだけ、なのかもしンないしねぇ」


 一般的には無名の、いわば、が作った音楽の可能性があるということか。


 そして、犯人の少年Aの周りにのみ出回っていたということか。


 もしそうならば、それを作った人間は、いったいどんなでその〝クトゥルー・ノイズ〟なる音楽を生みだしたのか。


 ここはひとつ、事件のあった現場に、直接、赴くしかないようだ。











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