(本文3-1)〝クトゥルー・ノイズ〟を探して
神話に登場する邪神の名を冠した音楽テープ、〝クトゥルー・ノイズ〟。
〝噂〟ではノイズ・ミュージックと呼ばれるジャンルのものらしいのだが、そもそもノイズ・ミュージックとは何なのか、先の仁科氏に尋ねてみた。
「ノイズのルーツは、1913年のイタリア未来派の画家兼音楽家のルイジ・ルッソロの『騒音芸術』まで遡れますが、それはまぁ置いといて、ポピュラー音楽の世界では1976年のスロッビング・グリッスル(註15)の登場からですね。バンド名は〝脈打つ男根〟って意味ですけど、元々はクーム・トランスミッションズ(註16)という芸術集団が母体だったので、多分にアート寄りの傾向もあったようです。他にも、ピンク・フロイド(註17)のジャケットデザインで有名なデザイナー集団ヒプノシスの元メンバーが始めたナース・ウィズ・ウーンド(註18)や、それと交流のあったH.N.A.S.(註19)辺りはクラウト・ロック(註20)、いわゆるジャーマン・プログレからの流れも感じられるし、他にもSPK(註21)とかあるんですが、大雑把にいえば〝アバンギャルドな音楽〟ととらえて間違いはないかと」
註15 スロッピング・グリッスル――
イギリスのノイズ/インダストリ
アル系バンド。バンドが掲げた
〝INDUSTRIAL MUS
-IC FOR INDUSTR
-IAL PEOPLE〟のスロ
ーガンは、そのままインダストリ
アル・ミュージックというジャン
ル名の語源となった。
註16 クーム・トランスミッションズ
――イギリスの前衛芸術集団。ポ
ルノ雑誌に掲載された女性メンバ
ーのヌード写真や使用済みの生理
用品を、ロンドン現代芸術研究所
に展示したりしたという。
註17 ピンク・フロイド――イギリス
のプログレッシヴ・ロック・バン
ド。シド・バレット在籍時はサイ
ケデリック寄りだったが、シドが
精神に異常をきたして脱退後は、
プログレッシヴ・ロックへと変遷
していった。
註18 ナース・ウィズ・ウーンド――
バンドというよりも、そのメンバ
ー構成の流動性ゆえ、スティー
ヴ・ステープルトン(元ヒプノシ
ス)のソロ・プロジェクトといっ
た方が正確か。音楽性も初期のク
ラウト・ロック風フリーミュージ
ックからテープ・コラージュ、実
験音楽など振れ幅が大きい。
註19 H.N.A.S.――アバンギ
ャルドでビザーレなドイツのバ
ンド。ちなみに読みは〝ハー・エ
ン・アー・エス〟。
註20 クラウト・ロック――主にジャ
ーマン・プログレの総称。元々は
〝酢漬けキャベツみたいな変てこ
ロック〟と侮蔑的な意味合いで使
われていたが、その音楽性の高さ
から、今では賞賛の意に変わって
いる。
註21 SPK――1978年にオーストラ
リアの精神病院の看守と患者が意
気投合(笑)して結成したとい
う。それだけでもうロック的に正
しい(いや、ノイズだけど)。
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