幻視する癖
緒方えいと
第1話 〝カマキリ女〟の話(その①)
〝幻視する癖〟があったのだった。
現実に存在しないもの、実在しないものがあたかもそこにいるように、リアルに見えたのだった。
粘液まみれのいやらしい化物や触手の絡まった魔物などが、おぞましい生々しさで見えたのだった。
幼かった頃は化物が見えるたびに泣いて親にすがったものだったが、そいつらが僕にしか見えないと知った時は驚きだった。最初はやさしく宥めてくれた親だったが、当然、彼らには見えるはずもないので次第に訝しがり、やがては嘘をついていると怒りだした。僕の訴えを殴ってやめさせようとさえした。わかってくれないという疎外感。そうだ。疎外感という言葉を知らないうちから僕は、それを実感していたのだ。
そんな幼児期を送ったためか、沈黙は美徳だと悟るのにそう長くはかからなかった。魔物や化物たちが眼の前を
そいつらが異次元みたいな世界に本当にいるのか、あるいは単純に僕の精神的な問題なのかはわからなかったが、我ながら興味深かったのは、それらがある種の〝象徴性〟、もしくは〝予兆性〟を帯びる場合があることだった。
もっとも印象に残っているのは、七、八歳頃に見た〝カマキリ女〟だ。
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