旅好きハケンの日常記

金森 怜香

第1話

初めての一人暮らし生活が始まった。

理由はもちろん、仕事による単身赴任。

リゾート地で働く、寮生活だ。

寮でも、私の働く場所はワンルームマンションタイプだ。


部屋に入ってそうそうに、私は荷解きを始めた。

着る服は私服は上下2枚程度、あとは防寒着と寝間着2つ、仕事の制服3組だ。

2ヶ月程度の生活で段ボール2つだが、母が少しでも節約できるように、と食料品は多めに持たせてくれた。


干し椎茸に、一人鍋の素、パウチご飯、パスタの麺、乾麺3袋(素麺1,蕎麦2)、パスタソース、和風ドレッシング、マヨネーズとケチャップ、お茶漬けの素などなど。

飲み物も梅昆布茶、えびす茶(広島県安芸高田市の特産品のお茶、以前広島訪問時に購入)、パウリスタの挽きコーヒーを持ってきている。


荷詰めを手伝ってくれた両親はこの部屋にいない。

人見知りするし人混み嫌い、常に一人で旅するから慣れているはずなのに。

見知らぬ土地に一人ぼっち……。

寂しいというより、心細いで不安しかない。


とりあえず夕飯を胃に入れよう。

私は食品ストッカーにしたケースを見た。

ザルを買えば、乾麺を戻して鍋の素を使って鍋焼きうどん……もとい鍋焼きのそばにでもできる。

あいにく、ザルやボウルは持ってきていない。

その上、道中でキャリーバッグのハンドルが破損したから処置の道具も欲しい。

近くに百均があったから、他にも必要なものを調達しに向かった。


冬だし、栄養バランスを考えたらかんきつ類は欲しい。

納豆が大好きだから、納豆が食べたい。

麺類ならネギは欲しい。

タンパク質は卵で補いたい。

生椎茸も安ければ買いたいな。

そんなことを思いつつ、私は百均とスーパー、薬局で買い物をした。


薬局はどうしても血が騒ぐ。

というのも。

ちょうど一年前、工場で働き始める前までは医薬品登録販売者として薬局で働いていたからだ。


買い物を終えて、寮の部屋に辿り着く。

迷わず帰ってこられたのは、正直嬉しかった。

私は二十から時々一人旅をしているので、基本的に旅慣れこそしているが、致命的に方向音痴なのである。


母は心配して風邪薬、花粉アレルギーの薬を持たせて、父からは湿布をもらった。

立ち仕事なら、湿布は役立つはずだ、と笑顔の父。

JRの最寄り駅まで送り届けてくれた後、父は言った。

[2ヶ月過ぎた後、辛かったらいつでも帰ってきて良いからな。お前の家はここだから]

父の優しさに、母の思いやりに、頑張らねば! と思う反面、不安な気持ちから涙が止まらなくなった……。





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