本当の友達は必要ですか?

霜花 桔梗

第1話 出会い

 わたしの名前は『撫子』で性格はド暗くわたしはクラスで孤立していた。


 友達なんて要らない。


もう、二度とあんな思いはしたくない。部活も帰宅部で生活に友達の存在が必要なかった。


 わたしの席は主人公席の定番の窓側であり、休み時間は窓から外を眺めるだけであった。そんな、生活が続くある日の事である。


「おーし、転校生を紹介する」


 ショーホームルームで担任の琴崎先生が可愛い女子を連れてくる。この担任の琴崎先生は生物部の顧問で噂では完全ヒューマノイドを開発した企業の親族であるとか、あまりいい噂の無い担任であった。


 そう、世間は完全ヒューマノイドの完成に沸いていた。完全ヒューマノイドは元となる人の人格を移したモノである。

 

 さて、琴崎先生は三十代前半の独身男性でわたしとは合わない性格であった。話によるとゲームしか趣味が無く。オタの世間体を落とす存在で、単純に気持ち悪いと感じるであった。


 それで、その転校生は『佐藤 つぐみ』と恥ずかしそうに自己紹介する。


「それで席だが、撫子の隣が開いているな」


 琴崎先生がそう言いだすとつぐみがこちらに向かってくる。


「よろしくだよ」

「あ、ぁ、よろしく」


 簡単な挨拶なのに心が痛んだ。もう一度だけ信じてみようかな……。


 そんな事をおぼろげに思っていると。


「わたしの秘密を撫子ちゃんだけに教えてあげるね」


 上目づかいでわたしをみている。な、な、何が目的だ、財産かそれとも下僕にするのか?


 ダメだ、過去の記憶が親しくしてくるつぐみに寒気がしていた。失ったのは中学生の時にソフトボールのバッテリーを組んでいた。


 『晶子』である。


 彼女は地区大会の決勝直前に事故で亡くなってしまった。それ以来、わたしは人を避ける生活が続いた。そう、晶子が本当の友達だったからだ。


 わたしは胸が痛くなり、つぐみから離れる。


『もう、失いたくない』


 そんな言葉が浮かぶ。すると、つぐみが追いかけてきて。


「わたしの秘密は撫子ちゃん専用の完全ヒューマノイドだよ」


 わたしはその言葉に戸惑いを隠せないでいた。この完全ヒューマノイドは友情の補てんの為に作られていた。内容は簡単、友情度を数値化して遊ぶゲームであった。九十%以上でクリアとあるが、まだ、非売品なので謎多き存在であった。


「何故、わたしは選んだ?」


 その問につぐみは「ある方に選ばれたの、これは非公開事項だからね」と呟く。どうやら、わたしの友達の拒絶は有名らしい。わたしは冷静さを取り戻して机に戻る。


 その後、数学の授業が始まり、しばしの平和な時間が過ぎた。休み時間に入るとつぐみが寄ってくる。


「この数学の課題が解けないよ」


 わたしは迷った末、ヒントを出す。


「ありがとなのだ」


 喜ぶつぐみを見て、わたしは親友とはなにかと考えさせられる。

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