第18話 死んだカラーガ。

アルマの方もライブのトレーニングにジェードが付いていたので普段以上だった。


ライブは色んな攻撃法でアルマを攻め立てながらマアル同様に氷の板に斬り込ませている。


「ほらほら!遅いって!盾も同じところばかり使うから傷が偏ってついてるよ!」

「はい!」


「ジェード、板持って逃げな」

「りょーかーい」


ジェードは「よっと」と言って氷の板を持つと鼻歌混じりに走って行き、ライブも「ほらほらほら、ジェードが逃げちゃうぞぉ!」と挑発をする。


攻め方で悩むアルマに「これはどう防ぐのかなぁ?」と言って追い打ちをかけるライブの攻撃を苦しそうに受け止めて「くっ…」と言うアルマ。

そんなアルマが力尽きて訓練終了になった。だが悪くない結果で「ライブ様!ありがとうございました!」と倒れたままアルマは感謝を告げる。


ライブはニカっと笑うと「アルマ、アンタのダメなところは盾を持って自信がついたから攻撃を待つクセが付いてることだよ。だからこの訓練にしたんだ。板を斬らなきゃ訓練が終わらないから攻め込まないとダメだよね?攻め込むことを忘れちゃダメ。後はキチンと盾で攻撃を防ぐんだよ。攻め込んで怪我をするなんてダメだからね」と指示を出す。



ライブの話に自覚できたアルマは立ち上がって礼を言うとジェードを見て「ジェード、今度2人でもこれやれないかな?」と言う、ジェードは「んー…、うん。考えたからやってやるよ。でも今はイブママいるからヒールしてやるからイブママの訓練を受けてみようぜ」と言ってアルマをイブの前に連れて行くとイブはニコニコと「やりましょう!」と誘う。


そのイブの訓練は行動の最適化を促すものだった。


「後でジェードちゃんと2人でやれるようになってくださいね。イブの動きを見て覚えてください!」

イブはそう言うと「上、右上…と言いながらイブが斬りかかるのでキチンと上の時は盾を上にして受け流してくださいね?そして必ず防いだら反撃で剣を放つんです。後は剣と言った時は盾ではなく剣で防いで盾で殴ってきてくださいね」と説明をする。


イブの恐ろしい所はこれを修行や訓練にしないで楽しそうに歌を歌いながら「ピッピッピヨピヨ…左!」「ピヨピヨピー!上です!」「ひよこがピヨピヨ…下!」「ピヨピヨ…剣!ピー!右上です!」と急に指示を出す。


その後もイブが考えたプリンの歌を歌いながら指示を出して一通りついて来られるようになると「ペースアップです!」と言ってひよこの歌が加速する。

プリンの歌も加速した所で「少しだけ意地悪です。イブはほんの少し遅くしてあげる代わりに何処を狙うか言いません。頑張ってください!」と言ってひよこの歌を歌いながら突然アルマに斬りかかる。

防げない剣があったもののアルマはキチンと適した防御と反撃を可能にしていた。


「お疲れ様でした!今度ジェードちゃんとやる時は誰か大人の人にギターで早目の曲をかけてもらいながらやるといいですよー!」

「え?終わりですか?」


ニコニコと笑顔のイブに、キツくない訓練を終えたアルマは困惑の表情を浮かべる。

ミチトがメロの誘いでカラーガに来る頻度が増えてからの訓練は本当にキツいものばかりで、そのアルマからしたら準備運動のような練習量だった。


イブはアルマの反応を嬉しそうに見てニコニコと笑うと「うふふふふ。ライブ、もう一度少しだけ訓練をしてあげてください。氷の板を動かすのは無しです」と言ってライブに訓練を頼む。

この訓練の意味と成果を理解しているライブは「えぇ?すぐ終わっちゃうじゃん」と言って氷の板を用意する。


不満げに「アルマ、始めるから構えな」と言って術を放つとアルマはキチンと防ぎながら前に出て剣を振るって氷の板に一撃入れていた。

先程とは全く違う結果に「え?」と驚くアルマに「ほらすぐ終わった」と言うライブ。


氷の板と剣とライブを見て「え?僕…」と言うアルマに「イブに感謝しなよ」と言うライブ。その横で通訳のようにジェードが「イブママってこう言う楽しい訓練が得意なんだよ。俺達もイブママのお陰でいつの間にか二刀剣術が撃てるようになったんだよ」と教える。


アルマは目を輝かせて「ありがとうございます!イブ様!」と言うとイブは「あはは、照れますねー。今度はもっと早い歌でも防げる様になったら新しい訓練をしてあげますねー」と言って笑った。



イブはニコニコと「ミチトさんは何か教えてあげますか?」と聞く。


「んー…何にしようかな。ナイワさん、何仕込んでも良いですか?」

「はい。是非お願いします」


ミチトは簡単にインパクト系の術を授ける。

「これは…攻撃の術ですね?」

「まあそう使いたいだろうけど防御用だよ」


理解できないアルマにミチトが「盾を構えて」と言ってアルマの盾を凍らせてしまう。


「相手が魔術師や氷系の魔物の時に、戦っていけば今みたいに凍る。そうなるとその盾は重いし丸みを失ってしまう。だからさっき教えたファイヤーインパクトを使うんだ。やってみて」

「はい!ファイヤーインパクト」


「よし、溶けたね。じゃあこれが相手がファイヤーサラマンダーなんかで盾が熱を持ったら?」

「ウォーターインパクトですか?」


「そうだよ。雷系の時はアースインパクトと言うより盾の表面に土を纏わせて雷を通さないようにするんだ」

「わかりました!ありがとうございます!」


ミチトは約束通りメロの訓練を行うために訓練場を貸してもらいに行く。


サンクタは先日のミチトの戦いを見て自らを鍛え直していた。

そして今朝見たメロの表情の暗さを気にしていたが今の笑顔を見て訓練場を貸す気になった所にアルマとマアルが素晴らしい訓練を受けられた話をナイワから聞いて感謝と共に二つ返事で訓練場を貸した。



そして後悔をした。


ミチトが今回メロの為に用意した訓練はメロと全く同威力の技や術を放つと言うものでそこにアクィも参加をする。

インフェルノフレイムには氷結結界をぶつけて凍らせて、逆に氷結結界をインフェルノフレイムで破壊する。

アースランスにはサンダーデストラクションでサンダーデストラクションにはアースランスをぶつけて相殺するもので剣撃には剣撃をぶつける。

1分も経たずに訓練場は焦土と化した。

そしてメロはキラキラと眩しい笑顔で戦い続けて見る者すら魅了していく。


そこにはアクィも居て神々の戦いを彷彿とさせる。

そのまま長時間戦いあった後でメロから「パパ!この間、お母さんの前で使ったアレをやってよ!」と申し出されて「へぇ、打ち破り方を考えたかな?」とミチトは不敵に笑う。


「勿論だよ!」

「わかった。アクィ…初見でも何とかしてみなよ」


ミチトはその言葉と共に訓練場の全てを大地に飲み込ませてとても深い大穴を生み出す。


ミチトとメロは飛び上がって浮遊術を使う中、アクィだけが遅れて飛び上がってどうするべきか思案している。

アクィが最終的に選んだのはミチト程ではないが無理矢理与えてもらった術量を使って落下を防ぐ為に飛行術を使った。


「まあアクィだとソレだよね。それで?同時に大きな術は使える?」

「くっ…術がなくても!」

アクィはそう言って果敢に斬りかかる。


ミチトは軽々と相手をしながらメロを見るとメロは足の下から上に向かってアースボールを放ってソレを足場にして器用にミチトに向かって切り掛かってきた。


「へぇ、やるねメロ」

「これなら術消費は少ないし術攻撃だってできるもん!サンダーデストラクション!」


メロは相殺不能の状況でサンダーデストラクションを放つ。


ミチトは容赦のないメロに嬉しくなりながら「ならもう一つ隠し球を出してあげるかな。見て勉強するといい。アースボール!アースランス!」と言い、目の前に巨大な土塊を生み出すとそこからアースランスが発生してミチトを狙う雷を相殺した。


まさかの相殺方法に目を丸くするメロに「お疲れ様、超重術!」と言うミチト。

この声で落下していくメロとアクィに参ったかと聞くとメロは素直に参ったと言うがアクィだけは「まだよ!」と諦めない。


メロを強制転移で呼び寄せて抱き抱えたミチトは大穴を見て「んー…諦め悪いから水責めしておこうかな」と言う。


「パパ、もうおしまいにして訓練場を片そうよぉ」

「そうだね。でもやっぱり俺のメロは凄いね。もう足場を思いついたか」


「それはすぐに考えたけど超重術の破り方だけはまだだからこの戦いをされると負け確定だよ」

「それは後でイブとロゼと話しなよ。メロとイブとロゼの3人ならすぐに答えが見つかるよ」

ニコニコと術の話をするミチトにメロが少しバツが悪そうに「パパ…」と声をかける。


「何メロ?」

「メロはパパの子供で居て良いの?メロを産んだ人はパパを悪く言った人だよ?」


これはメロがここ数日ずっと聞きたくて聞くことが怖かったこと。

今なら聞けると意を決して聞いていた。


ミチトは目を丸くして「え?何言ってんの?」と言った後でまくしたてるように「メロは俺とアクィ達の子供だよ。間違えちゃダメだよ!外で聞かれたらちゃんと大好きなパパの子とそこそこ好きなママと大好きなお母さん達の子って言うんだよ!」と言う。

突然のミチトの勢いにメロが「パパ?」と聞き返すとミチトは「大丈夫!メロが気にならないようになんかそこら辺の術を考えるからね!」と言い切る。その顔は本当に何とかする時の顔だった。


「パパ、本当?」

「本当だよ。だから出て行くなんて言っちゃダメだからね?」

ミチトはメロを抱きしめて頭を撫でるとメロは泣いていた。

しばらく空中でメロを抱きしめたミチトは穴の中を見て「あ、アクィだ」と言う。

メロも一緒に穴を見ると崖のようになっている壁面を必死にアクィが登ってきていた。


「バカだよなぁ、アースサーブで帰って来ればいいのに超重術の中を壁登りしてるよ」

「もう、ママも助けてあげて?」


「えぇ?アクィ参ったしてないよ?」

「おしまいにしようよ」


「仕方ない」と言ったミチトがアクィを呼び寄せて抱き抱えるとメロがミチトとアクィに手を回して「ありがとう。パパ、ママ、メロを娘にしてくれてありがとう。大好きだよ。ちゃんと人に聞かれたら大好きなパパとママ達の娘って言うね」と言って抱きしめた。


訓練場を元に戻してサンクタに返すとサンクタは青い顔で「死んだ…、カラーガは死んだ」とブツブツ言っていた。

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