第104話 メルディス




メー爺からメモ帳とペンを貰い個数を書いていく。

植物系のダンジョンと聞いていたけど出てくる魔物は植物系は少ない。

森に生息するやつらが出てくるようなそんな感じだ。


「材料は結構揃ったね。 回復薬には使えないけど。 これで何が出来るかルヴァルダン君に聞いてみようかな」


そんな事をしている間にミーリアと父が迎えに来た。



そのまま応接室に行くと初老の男性がソファーに腰かけていた。 背筋はきちんと伸びてロマンスグレーの髪はきちんと整えられている。 今まで見た魔族の人たちのどれよりも凄みがあって貫禄がある。


「メルディス連れてきたぞ」


父が軽く話しかけてぎょっとする。


「メルメル腰は大丈夫カ? 寝たきり辛くなかったカ?」


ミーリアが腰の心配している。 二人とメルディスさんの温度差が酷い。


二人から話しかけられたメルディスさんはスッと立ち上がると私たちの目の前まで歩いてきた。


目の前に影が出来見上げる。

私の身長が160弱だからメルディスさん2m近くあるんじゃないか!?

おっきい!!


「君が優介の娘か」


「は、はい」


少し背をかがむようにして観察される。

しばらくすると目じりにしわが寄った。


「こんな小さいのに協力してくれてありがとう、ミーリアもよく頑張りましたね」


頭に重さを感じ、視線を上へずらすとメルディスさんの手が頭の上に乗っていた。


ひとしきり満足したのかメルディスさんが私達をソファーへと案内してくれた。

ソファーに腰を下ろすのと同時にドアが開きメイドさん達がお茶を煎れてくれた。


人居たんだ!?


思わずメイドさんの動きを目で追うとその様子に気づいたメルディスさんがクッと笑みをこぼした。


「優介がまさかそこまで過保護とはな」


「ほっとけ」


話を聞くと眠りについているのは師団長と魔王のみで他の魔族の人たちは普通に働いているそうだ。

眠りについている人たちの世話係以外はお城には居ないとはいえ少ない人数ではあるがお城に入る。

どうやって清潔に保たれていると思ったが私との接触しないように父が計らっていたそうだ。


「そんなやり方だと嫌われますよ」


「う……」


メルディスさんは笑顔でそう述べた。


それからはメルディスさんが眠っている間の出来事とこれからのことをすり合わせが行われた。

ミーリアサイドと父サイド。

影響を受けたこっちの世界の情報は私から話をした。


メルディスさんは頷きながら話を聞いていた。





一通り話を終えるとメルディスさんが私の方を向きながら


「それで優奈さんは何か望みはありますか?」


そう問いかけた。


「え?」


「今現状元の場所に返すことは得策ではありませんが様子を気づかれないように見る事くらいはできますよ」


「見れるんですか?!」


「声は届けられませんがね」


穏やかな表情で話しかけられる。


「メルディス!!」


「優介、あなただって気になっているはずですよね。 無事を確認するぐらい良いでしょう」


父は口を開けたり閉じたりして何かを言おうとしたがメルディスさんが言う通りに気になっていたのも事実だったようで口を閉じうなだれるように頷いた。


「まだ本調子ではありませんので数分だけですが……いきますよ」


メルディスさんがそう呟くとテーブルの上が鏡のようになり徐々に見慣れた風景が映し出されていった。






メルディスという魔族は最古の魔族の一人である。


魔族は人族よりも寿命が長い。

メルディスに至っては数百年も生きてきた。


要するにメルディスにとってしまえば最年少の師団長であるミーリアも、優奈も優奈の父の優介もまだほんの幼子同然だった。

数百年生きるメルディスにとって数十年など誤差だった。


幼子が頑張れば微笑ましく映り褒めてやりたくなるし、感情が高ぶっていれば落ち着かせたくもなる。


メルディスの目には優介はちょっと先走っているように見えた。

種族は魔族と人族と違えど、ミーリアに頼られて張り切る兄のように。

その子供の優奈に至っては見ず知らずの所に連れてこられた赤子のように映り、ところどころに見え隠れする不安が不憫に思えた。


優介は家族がこちらの世界にいる、話を聞くに優奈に負い目があってか、優奈がこちらに来てから久しく様子を確認していないようだ。

里心がついてしまうからなのか分からないが。

だが現状把握は悪くない。

それを見せて落ち着かせよう、そう考えた。


魔力は未だ全快していないとはいえ、姿を見せる事くらいは造作もない。


善意の気持ちで姿見の魔法を使用した。


ミーリアも自分が使えない魔法に興奮しているし優介も口では否定的な言葉を言うが気になっているようだ。


優奈の手を取り心を読み見たい場所を映す。

私も初めて見るこちらの世界に興味はあった。

今後暮らすかもしれない場所だ。

報告するためにも見ておく必要がある。

そう思い魔法を展開していった。


扉が見えた。

こちらの世界では見ないような材質の物だ。

優奈や優介の話に耳を傾けながら先に進んでいく。


この建物はどうやら家のようだ。

こちらとは違う建物の造りにメルディスも年甲斐なく心ときめいた。


時刻は昼間らしい。

玄関から場所が映り室内の扉をくぐる。

室内の扉にはガラスがはめ込まれている。

わざわざ割れ易い物を使用するなんてと驚く。

こちらのドアは破れないように頑丈な物にさらに重要な場所の物には保護魔法がかかっている。

治安が良いのだろう。


室内は外からの光で明るかった。


暗視魔法を使用しないでも良さそうだとそのまま魔法を続ける。



「え?!」


不意に声が上がった。

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