第71話 検証
家に着くと部屋着に着替え制服をハンガーにかける。
常備菜も作らないといけないな。
冷蔵庫を開け材料を見る。
2つ入りの鳥の胸肉がある、賞味期限が近いや。
鍋に水を入れ火にかける。
水が沸騰する前に鳥の胸肉をジップロックに入れ鶏ガラと塩とお酒を少々入れる。
水が沸騰したら空気を抜いたジップロックを投入し火を止める。
「後はほったらかしてサラダチキン~」
本当は厚さを均等にしたりとかフォークで穴を開けたりすると味が沁み込みやすいらしいけど、ずぼらな私は調味料入れて終わりだ。
火加減間違うとパサついたり触感がやばいやつになったりする。
火の通りが甘くて触感がやばいやつは電子レンジで加熱だ。
「胸肉はこれで良いでしょう。 後は和える用のきゅうりを叩こうかな?」
冷蔵庫からきゅうりを取り出し、水洗いした後塩を適量振ってゴロゴロまな板で板擦りする。
先っぽを切り落とし、斜めに乱切りし上から押しつぶすようにきゅうりを割る。
さっと塩を流して塩昆布を和える。
後は胸肉が出来たら混ぜて完了。
メインは何にしようかな?
そう考えてちらりと残りの胸肉を見る。
確かフライドチキンのシーズニングがあったな。
今日は鶏肉デーだ。
分厚い胸肉を平たくなるように調理バサミで開き、ひと口より大きめのサイズに切る。
フォークを使うのがメンドクサイのでそのままビニール袋に入れ、フライドチキンのシーズニングを振りかける。
袋の中で良く揉み味をなじませる。
炒め物も揚げ物も出来るフライパンに揚げ焼き用に少なめに油を入れ温める。
10分ほど置いて、今度は薄力粉を袋の中に投入。
油の中に粉を少し落とし、温度を確認。
良さそうなら鶏肉を投入。
フライドチキンも出来たら後はスープかな?
……今コンロ一杯だし、サラダチキン完成したら作ろうっと。
夜ご飯の調理を一旦止め、道具を綺麗に洗い、洗いカゴへ入れ、自室に籠り本題に入ることにした。
「お待ちかねの実験の時間だ!!」
テーブルの上にはノートとペンと今日買って来た飲み物の類。
まずはビタミン剤からだね。
そう思いビタミンドリンクに向けて適応を唱えた。
「ふむふむ、なるほどなるほど……」
結果を述べるとビタミンドリンクは下級快復薬になった。
エナジードリンク的な炭酸飲料や経口補水液も下級回復薬になった。
他には野菜ジュース、色々な果物が混ざったジュース等は水になった。
私も異を唱えたいけど結果としてそうなってしまった。 解せぬ。
せめて……せめて快復薬にならずともディトルグ国の野菜ジュースとか果物ジュースとかになって欲しかった。 水て……。
そして単なる炭酸水や単体のみの果物ジュース、濃縮還元や果汁100%のオレンジジュースとかぶどうジュースなども水になってしまった。
これならジュースはそのまま飲んだ方が良かったよ。 水多すぎるよ。
部屋中木桶だらけになってしまった。
しょうがないから水は台所まで運んで流し、残った木桶は分解して新しい木桶を作るを繰り返して在庫を減らした。
木桶と水を処理し、結果をノートに書きこむ。
こうしてノートにまとめると、何か法則が見えてくるかもしれないと思う。
「ビタミンドリンクとエナジードリンクかぁ……なんだろう。 エナジードリンクは栄養ドリンクと似たような感じだから分かるけどビタミンドリンク? 野菜ジュースは水になったのに?」
ノートを前に腕を組み頭を傾げる。
「ビタミン特化だから……とか? なんか加工したらそうなるのかな? でも野菜ジュースは? うーむ、分からん。 次行こう次!!」
分からない物はいつまで悩んでても仕方がない。
次は湿潤療法の絆創膏。
これは下級回復薬になった。 怪我の治りを早めるからなのかな?
マスクは布になった。
あんまり綺麗じゃないね。 ディトルグ国では布がマスク替わりなのかな? でもなんだかバッチィよ。
布を摘みあげる。
そっとビニール袋の中にしまい何かが漏れないように硬く入り口を結んだ。
手はアルコール消毒した。
そしてアルコールは何故かディトルグ国のお酒になった。 しかも樽で。
鑑定結果はディトルグ国で親しまれているお酒と出た。
樽の外見は使い古された見るからに年代物の樽だ。
大きさは直径が私の胸位。
太さは両腕を回して3分の1余るぐらいの太さ。
そしてなんと言っても触るのも戸惑われるくらいの古い見た目。
それが部屋の真ん中にドーンと鎮座している。
ちなみに私が変えたのはアルコール度数89%の消毒用のアルコールである。
それがなんでディトルグ国のお酒になるのさ!!
開け口もよく分からない。
……沁み出てこないよね。
ぐるぐる樽の周りを回り沁み出てないか確認する。
ちゃんと密閉されてるっぽい。
流しで中身捨てちゃう?
持てるかなこれ。
じっと樽を眺める。
そのまま素手で持つのは憚られた。
そうだ。 軍手!! 軍手をはめればオッケーだ。
草むしり用に買っていた軍手の新品を両手に嵌める。
「準備は出来た。 いざ……勝負!!」
何の勝負かはさておき、腰を落とし両手でしっかりと樽を挟む。
力を入れ過ぎて、樽からきしむような嫌な音がした。
やばいやばい砕けちゃう!!
力を緩め、ベストな加減を探す。
「このぐらいかな? お、行けそうだ」
曲げていた膝を伸ばし樽を持ちあげる。
「……意外と軽い? 中身入りだよね? あれ?」
そのまま軽く樽を揺らす。
接触しないように気を付けながら耳を澄ませる。
中からはチャポンチャポンと液体が揺れる音がした。
「結構入ってるっぽい……?」
それから導かれる答えは……。
「私……力持ちになってる!!」
何故か謎の感動があった。
今まで力持ちになった実感なんてなかったし。
「でもこれ邪魔だなぁ」
持てたところで邪魔なのに変わりはない。
「あ、そうだ」
ここで思い浮かんだのは姉の姿。
きっと疲れて帰って来るから飲んで癒されてもらおう!!
我ながら良い考えだ。
身体に害は無さそうだし、異国のお酒、珍しいよね。
そう思い、一度元の場所に置き、台所からゴミ袋を持ってきて部屋の片隅に敷き、その上に樽を移動した。
元々樽が置かれてた場所は少し汚れてしまった。
その汚れを見て何とも言えない気持ちになった。
浮かれた気持ちが凪いでいくのが分かる。
掃除用品を仕舞っているところから重層とクエン酸とバケツと雑巾を持ってきてゴシゴシと掃除した。
そして一息つき冷静になると、快復薬のことを思い出した。
スマホを取り出し、検索する。
一番安く済みそうなエナジードリンク的な炭酸飲料をネット通販で購入することにした。
「痛い出費だけど……上級快復薬出来るね。 楽しみだな」
商品が届く数日の間ウキウキしながら心待ちにした。
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