第46話 ダンジョン




「本日いよいよダンジョンに潜る。 準備はいいか?」


「「「「「はい」」」」」



所属するダンジョン探索者達がその問いに返事をする。


教官が前に出て私たちはその対面に7列5人で並ぶ。

服は支給され、自衛隊員と同じ服装だ。 

ただ、区別をつけるために私たちは腕に腕章を付けている。


ここに居る者達は地上で自衛官たちに混じり訓練を行い2カ月にわたり訓練を重ねてきた。


政府が指定した『門』 へと出向き攻略に乗り出す。


「まずは上層階でダンジョンに慣れてもらう。 ダンジョン内は洞窟のようになっており陽光が無い。 よって昼夜の区別がつかない。 体の順応をまず第一に考えてくれ……」



教官から今日からのダンジョン攻略の内容が伝えられる。

日程は今回が初回なので2泊3日。

1日目はスライムしか出ない2階層での体の順応。


2日目は3~4階に別れて数人ずつ組を作り実際の魔物の討伐訓練。


3日目は2日目の出来を見つつ余裕がありそうな場合5階の様子見、そして帰還となっている。


人数は今回先行した自衛隊員含めて38名ほど。

内訳は職持ちが20人に自衛隊員15名、教官が1名、臨時の教官が2名。

自衛隊員には拠点づくりと食事管理、救護など実戦を伴わない後方支援を行ってもらう予定だ。

私たちの訓練内容を記録する広報部の人もいる。


今回の実地訓練が済んで問題が無ければ、次は2週間後に10階層を目指しアタックとなる。


隊列を組んで専用車両に乗り込み指定されたダンジョンへと赴いた。


専用車両の中は緊張感が漂っていた。


「五十嵐緊張してる?」


「……当たり前だ」


「人前で戦ったのに?」


「あれは……やり過ぎた。 すまん」


「あ……こっちこそごめん」


戦いとは鎮圧の時のデモンストレーションのことだ。

ちょっとからかったつもりが謝られてしまった。


場を和ませようとしたのに帰って微妙な雰囲気になってしまった。


これはダメだ。

何言っても緊張解けそうにないやと大人しく揺られることにした。





政府指定の『門』 の前



自衛隊の人が専用車両から荷卸しをする。

機材や備品、簡易テント、今回実験する用具なんかが卸される。


私達も私達で自分たちが必要なものは自分たちで背負う。

それだけでも10kgは超えるのだが私たちにとっては無いも同じだ。

重量がある物も職持ちの何人かで引き受けて運んだりしている。

流石にすべて私達が運んだんでは自衛隊の訓練にならないと言われてしまった。

自衛隊が6割、私達が4割くらいの割合比かな。

私も持とうとしたら五十嵐から「俺らに任せておけ」 と止められてしまった。


『ご覧ください、今自衛隊がダンジョンへ突入する模様です』


ここには政府があらかじめ情報を流したテレビ局のリポーターやカメラがおびただしい位集まっていた。


それらを気にすることなく精神を落ち着かせる。

目の前にはネットやテレビでよく見た『門』。


静かに深呼吸し気合を入れなおすと号令と共に歩みを勧めた。


いくよ!!



門をくぐるとその壁は土壁に変わり、進むほどに光が失われ薄暗くなっていく。

それぞれがヘッドライトのスイッチを入れ視界を確保する。

動画で見たものと同じだ、本物の土かどうか触って確かめたくなる。

だが、今は隊列を組んで進んでいる。


我慢だ我慢。


ぐっとこらえて付いて行った。



30分ほど歩くと下に降りる不気味な穴が現れ、下へと続く階段が見えてきた。

横幅広く、5、6人は並んで下りれそうだ。


「これより先2階へ進む、各自足元に十分注意されたし」


「「「「「はい」」」」」


あれ? そう言えばスライムは?


動画で見たスライムが見えなかった。


足元に注意し2階に降りる。

1分位で2階へと到着した。


2階も1階と同じく土壁だ。

ゆるりと辺りを見渡す。

スライムはどうやら壁際に隠れていたようだ。

いわかげにヘッドライトの光が当たるとその後ろに居たスライムがフルリと揺れた。


……スタンピードの時は無我夢中で踏みつぶしたけど、あんなふうに岩陰から様子を伺われると可愛く見える。 不思議だね。 あれかな? 不審者来たって感じなのかな?


ヘッドライトの光があちこち揺れる。

どうやら他の人たちもスライムを発見したようだ。


だけど列を乱す人は居ない。

指示に従って移動する。

まだ目的の場所ではないから。


1時間ほど歩いた場所で隊の先頭が止まった。

開けた場所に出たらしい。

流石に2階だけあって1階よりも広い。

これほど歩いてまだ半分らしい。


それもそうだ。

1階は基本広い道が1本、たまに細い脇道があるが、大通りを歩けば下に降りる階段についた

2階は道幅が全て一緒で分かれ道も多い。

その結果1階よりも時間がかかったのだ。


「拠点設置を開始する。 障害の排除。 天幕の設営!!」


教官の声で、明り担当の自衛官と障害排除の役目を与えられていた職持ちとテントを運んでいた者が前に出る。

広くなっている場所に明りが集中する。

そこでうごめいていたスライムが光りから逃れようとゆっくりと壁際に移動していく。

障害排除の役目を与えられていた職持ち、今回は黒沢さんと相沢さん、内田さんがスライムを踏みつぶしていく。

踏みつぶされたスライムは光を放ちながら消えた。

何体目かで下級回復薬を落とした。

今回の障害排除で3本の下級回復薬が発見された。

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