第18話 下級回復薬


それを見送って、いつも通りにゴミ袋の草をディトルグ国の雑草に変える。

分解して種にして上位交換で先ほど出てきた植物の種と交換した。


花壇の空いているスペースに穴を開けて種を植える。

後は姉が回復したら『成長の結界』 を使ってもらえればいいだけだね。


……私回復薬作れるかもしれない。

異世界っぽい物初めてだな、楽しみ!!


姉が回復してくるのを今か今かと待ちわびた。


数分して姉が回復して戻って来た。


「あれって筋肉痛にも効くんだね。 痛み全然なくなったよ」


「良かったね。 じゃあさっそくお願い!!」


「はいはい、『成長の結界』」


姉もこのGWで扱いを学んだのか、枯らすことなく立派に成長させることが出来るようになっていた。


種の周りを薄い膜が覆う。

成長に合わせて膜が大きくなり、膝丈位の高さまで成長すると膜が消えた。


「どう? そんなもんかな?」


「多分。 葉っぱも沢山付いてるしいいんじゃないかな?」


「じゃあ次のも成長させるね」


「お願い」


次々に成長させる姉、サモミュエルだけは花まで咲かせてくれた。

鈴蘭のような形をしていてとても可愛らしい花だった。


取りあえず、姉と手分けしてそれぞれ葉を全部毟る。

茎だけになってちょっとかわいそうな見た目になってしまった。


アマトリスの葉が22枚、ルールディーの葉が13枚、サモミュエルの花32個、ソラスレルの葉6枚。

ソラスレルの葉はフキのように大きくて6枚しか取れなかった。

6枚取れただけでも良かったのかな?


「これらから下級回復薬が出来るのね……」


「やってみるよ。 『作製』」


―下級回復薬を作成しますか? ―


と出た。 


きたぁぁぁぁあああ!!!!


「はい!! 」


目の前の素材の山から下級回復薬に必要な分の葉や花が浮かび消えた。

そして地面に青色の液体の入った試験管が落ちていた。


鑑定をするときちんと下級回復薬と表示された。

効果: かすり傷程度の傷を癒すことが出来る。 と書かれていた。


「出来た!!!!!!」


「優奈凄い凄い!!」


思わず姉とハイタッチする。


「お姉ちゃんありがとう!!」


「優奈って本当に錬金術師なのね。 びっくりしたわ」


「え? 信じてなかったの?」


「今信じた」


「遅くない?」


まだ疑われてたのかとびっくりした。


姉は残った葉の枚数を数え始めた。


「アマトリスの葉が19枚、ルールディーの葉が11枚、サモミュエルの花27個、ソラスレルの葉5枚残ってるわ。 と言う事は、下級回復薬を作るのにアマトリスの葉が3枚、ルールディーの葉が2枚、サモミュエルの花は5個、ソラスレルの葉が1枚必要なのね」


「忘れないうちにメモしておこう」


手元にノートが無いのでスマホにメモしておいた。


ついでに毟られ残った茎に成長の結界をかけても生えてくることはなかった。

どうやら永遠に取り続けることは出来ないみたいだ。



「……どうでもいいけど抽出必要なかったね」


「そう言えばそうね。 抽出って何に必要なのかしらね」


「分かんない」


薬に必要ないなら何に必要なんだろう。

考えても分からないからしばらく放っておこう。



その後作れるだけ下級回復薬を作り計5個の回復薬が出来た。 もしかして上位交換で中級回復薬が出来るかなと思い、チャレンジしてみたが作ることは叶わなかった。


姉に2本渡し、姉から『私も職業について内緒にしておくから優奈も内緒にしておきなね』 と助言された。

姉はそのまま夕方に一人暮らしの家に帰っていった。


ちなみに下級回復薬の味は「無」 だった。 色々な味が混ざり合った結果、打ち消し合って味が0になったのだろうか? 飲んだ後、味についてしばらく混乱した。


私は母と二人で夕食を取り、部屋に戻ると姉の置き土産を思い出した。


一つ目の医薬品で下級回復薬が出来たからすっかり忘れてた。

紙袋の中を見ると、どうやら市販の解毒薬と書かれた箱と、風邪薬が入っていた。


解毒薬なんて市販してるんだ。 と思いながら手に取る。

毒なんて色々あるよね、蛇や蜂、蜘蛛に蛙、茸の類、クラゲやらなんやら。 赤魚の棘が刺さったらお酢で洗い流すといいんだよねとか思い出し、もしかしてお酢も解毒薬? とか思ったりもした。

考えを元に戻す。 この解毒薬は何に効くんだろう?


効能を見るとどうやら肝臓の薬みたいだ。 肝機能を高めて解毒するのかな? ウコン的な感じ? 首をひねりつつもう一つの薬、風邪薬を手に取った。


こちらは良くCMをやっている奴だ。 咳喉鼻に効くタイプ。 病気に対する何かが出来るのかな? 面白そう。


「ステータスオープン」


MPはまだ十分残ってるね。


何にが出るかなと思いつつ解毒薬と風邪薬を『適応』 した。



「ぉぉぉぉおおお!!!!」


適応してできたのは下級快復薬と下級解毒薬だった。

風邪薬から出来た下級快復薬は薄い黄色の液体の入った試験管。

解毒薬から出来た下級解毒薬は赤い液体の入った試験管だった。


「快復薬? 」


快復薬の文字に違和感を覚え、先ほど作った下級回復薬を見る。


快復と回復、読みは一緒だけど字が違うや。 

鑑定の結果、快復薬は軽度の病を癒し、回復薬の方は怪我を癒すみたい。 紛らわしいな。


「おっと、忘れないうちにノートに書いておかなきゃ」


テーブルの上にノートを広げ、メモしていく。 

先ほどスマホにメモしたことも書きなおす。


「ついでに分解して材料を確認しよう」


下級快復薬を分解すると下級解毒薬、下級回復薬、バララカの花、ツキナグサの実、リュウリンの樹液になった。

……快復薬作るのに回復薬必要なの?


下級解毒薬を分解したらシノジダケという茸とマツマツナの実、ダークヴァイパーの肝になった。



……下級快復薬も下級解毒薬も自力で作るの無理じゃない?

茸はもしかしたらシイタケとか適応したら種菌が出来るかもしれない。

問題は君だよ。 ダークヴァイパー君。

何ダークヴァイパーって。 あの洞窟で見つけるの?

素材が判明したもののガックリと肩を落とした。



しばらくは花壇で下級回復薬の材料育てようっと。

そしてゆくゆくは中級回復薬、上級回復薬を作ってやる!!


取りあえず余った素材どうしようかな。 全部生ものだよね。 特にダークヴァイパー、肝て、臭くなる未来しかないよ……。 どうしよう。


しばらく悩んで、薬局へ赴き同じものを買うことにした。

懐へのダメージが痛かった。

解毒薬高かったぁ。 私もバイト探そうかな。 


適応を唱えて分解し、再度作製した。

これで残ったのは葉っぱだけになった。


ちなみに味は下級快復薬は少し甘く、下級解毒薬は気泡なんて見た目になかったのに飲んだらシュワシュワしていた。 


そして私のGWは終了した。



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