第11話 スキルの検証



「じゃあお母さん仕事に行ってくるわね」


母の連休は明日から。 今日は休日出勤らしい。 それを見送ると姉と二人で食器を片づけシロにご飯をあげて庭に出た。


「よく毎日草むしりできるね。 優奈凄いわ」


ゴミ袋一杯の雑草を見て姉がそう感想を述べる。


「だって楽しいんだもん。 ちょっと待っててね。 まだ分別してないから」


姉にそう告げ、いつも通り分別する。 ちまちま分けていると姉から一言貰った。


「……優奈、それ、分ける必要ある?」


「え?」


「草を適応して全部雑草になったって言ってなかったっけ? なら分ける意味とは?」


「……気分かな? いやそうだねーそうだよね!! 分ける意味ないね」


姉の言われた意味を理解するまで時間がかかった。

時間がかかった故にこのセリフだ。

ちょっと恥ずかしくなったので動揺を隠すように立ち上がり、


「ちょっと見ててね『適応』」


適応を唱えごまかした。

そう唱えるとビニールから繊維に変わった袋の中がいつも通りディトルグ国の雑草に変わった。


「これでMPの消費はどれくらいなの?」


「んーっと……この量で5かな?」


「少なっ!!」


「まだまだこれから使うよ、待っててね『分解』」


「種になったね」


袋の中にはいつも通り種が残った。


「さらにこれを『上位交換』 」


ここで今まで選んだことのない種を選んだ。

ちなみにここで選べるのは数百種類の種。 全部数えたわけではないけれど百以上はあったのは確実。 


「……たった5粒?」


「そうなんだよー。 全部交換するまでどれくらいかかる事やらだよ」


ゴミ袋一杯に草を詰め込んで上位交換までたどり着くころには数粒しかならない。

誰か私に雑草を頂戴。


「それでね、今までのはこの花壇に植えてあるんだ」


そう言って姉を花壇に案内する。

花壇の大きさは3畳ほど。 ディトルグ国の土はそのうち1/4にも満たない。


「ん? この色の違う土の方には芽が生えてるけど……他には植えてないの?」


「植えたよ。 でも生えてこないんだー」


花壇の前に二人で座り込む。 姉は色が変わった土を指先でつまみ捏ね始めた。


「ん? 植えてからどれくらいたってるの?」


「大体1、2週間くらいかな? でもどっちも同じ時期に植えたのは確かだよ」


「そうなんだ。 なんだろうね? やっぱり土のせいなのかな?」


「まだ分からないんだよね、このスキル不親切設計だから大変だよー」


「そっか。 よし!! じゃあ次は私も試していい?」


姉はその場で立ち上がると私に笑顔を見せてきた。


「試す……あ、結界? うん、お願い」


「よしきた『成長の結界』 あ、名前出てきた。 ここに植えられてるのって『アアカラネ』 、『アアリリア』 、『アイスサンド』 、『アイスランド』 、……全部アばっかりか!!」


「そうだよ。 だってア行から交換してってるもん!!」


姉にア行攻めを理解してもらえて嬉しくてどや顔して答えた。

中途半端に交換していくとどれを交換したかわからなくなっちゃうもん。


「……まぁいいけど。 ほら成長が始まったよ」


「え? あ、本当だ!!」


さっきまでまだ双葉程度だった芽の周りに、私の傷を治した時のような薄い膜が出現し芽が覆われた。 すると双葉がゆっくり成長し始めた。


「ええ? 凄い凄い!! 成長しているよ」


「どうだ。 私のスキルもすごいでしょ?」


「うん!! お姉ちゃん最高」


「もっと褒めたまえ」


ドヤ顔する姉を褒め称えながら二人で草の成長を見守った。


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