「ダヴィデ歴戦史」

AOI

第1話 「少年ダヴィデ!」


「ダヴィデよ!

この先に盗賊達の隠れ家がある!

覚悟は出来ているか?

生半可な覚悟だと命を落とす事になるぞ!」


「父上!

私はまだ16歳の齢ですが、羊飼いである私は、羊を守る為に昼夜と寝ずの番をし、襲いくる狼やハイエナを何度も撃退してきました。時に腕を噛まれ、背中に深い傷を負い、生死を彷徨うことがありましたが、今や、大人に負けない働きが出来ると自負しています。私は一介の羊飼いに過ぎませんが、戦士である兄達に決して劣る者ではありません!」


「さすがは、我が子ダヴィデだ!

お前は末子で未熟児で生まれ為、生後100日後に高熱の為死にかけるような子であったが、預言者サムル様の祈りによって命を繋ぐ事が出来た。サムル様は命の恩人なる方!決して御恩を忘れてはならない!良いな!」


「勿論です!

いつか預言者サムル様のお役に立てるように、日々鍛錬して行くつもりです!」


「良い覚悟だ!

さぁ見るが良い!丘の中腹の崖の窪みから、微かな煙が上がっている。お前は囮となり、奴らを誘い出し、林の中の罠に誘い込み、動きを封じよ!私がその隙に捕えられたセツラを救出して見せる!」


「セツラは無事でしょうか?」


「セツラは、夢見の一族の血を引いており、かつて7年間の大危機を救ったセツラ様の名を与えられた特別な少女だ。それ故に彼女の特別な力を得ようと、蛮族の野党に狙われる事になったが、奴らもバカではない。セツラを傷つけたりは、しないだろう!彼女は金の卵なる存在だから・・高値で売れるのだ。」


「セツラが持つ力は、それ程凄い力なのですか?」


「その通りだ!彼女が居た村は、大きく繁栄している。それは、彼女が幸福を呼び込む力を持っているからだ!」


「野党にまで、狙われるとは、どのような力なのですか?」


「未来を見通せる力・・夢見の力だ・・。

本当のところは、幸福を開花できる要素がある者にしか、夢見の力は働かないと聞く。誰でも幸福が得られる程、世の中は甘くはないのだから!」


「父上!私はどうですか?」


「私が知る限り、お前は、最も幸運な人間だ!

ダヴィデとセツラの将来に一族の命運が掛かっていると預言者サムル様はおっしゃっていた!!さぁ!セツラを救出に行くぞ!時の声をあげよ!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る