第24話
『である連呼』が効果があったのは、数夜のみ。私は恐怖と不安のただ中で、一人、簡易式の小天幕――テントの如くのもの――の中で寝ていた。ついに抑えられず、
「お父ちゃん。恐いよ。守ってよ」
と、そう小声でつぶやいた。中学の時からのおまじないだった。そして、いつもの如く恐怖と不安が減って行き、落ち着いた。
(えへへ。お父ちゃんは強いのだ)
(えへへ。お父ちゃんはいつも私を守ってくれる)
でも困ることがある。
涙が止まらなくなるのである。
私は外でたき火のそばで見張りに当たるお二人に気付かれたくはなかった。どちらか一人が常に起きており、交替で眠るということだった。
お二人の意見では、『黒林』というところを抜けるまでは、宿駅に泊まるのは、避けた方が良いとのことであった。
街道筋ということもあり、ここら辺まではオーゼンシュタインの商人たちも
もちろん、私が反対する訳もなく、ゆえに出発以来、ずっと野宿となっておったのだ。
私は小天幕の中におるため、涙が見られることはないが、
やがて、外から声がした。
「お嬢様。どうかされましたか?」
ゴリねえの声だった。
「大丈夫。泣くとすっきりするから」
そう答えると、もう問われることはなかった。
そして次の日の朝、ゴリねえに尋ねられた。
「すっきりされましたか?」
「ええ。もう大丈夫」
「分かりますわ。私も
「そうよね」
(ゴリねえも、誰かのことを想い出して、涙が止まらなくなることがあるのだろうか?
どうやら、ゴリねえと私は容姿ばかりでなく、心まで似ているらしい)
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