第22話
私は引き続きチイねえとゴリねえのみを伴って、街道沿いを敵国国境へと向かっておった。
ところで、私は憤激のあまりに、ただそれゆえに今回の決意をなした訳ではなかった。『もしかして』と想うところがあり、そして『それは試す価値のあること』だったゆえである。
そう、もし私が乙女ゲームの提示したシナリオに乗るならば――少なくとも、その乗っている間は、すんなり行くのではと。
つまりシナリオに従う以上、乙女ゲームは邪魔できず、むしろ協力者の如くに振る舞わなければならないのではと。それが如何に最終的に乙女ゲームの利に反することが明らかであるとしても。
しかも私がこれをなせば、乙女ゲームは『婚約破棄』という重要イベントをなし得る。
『王太子の親友たち』を殺されながら――こちら側の
殺害の罪科を理由に、国軍を公爵領へ派遣することも可能であったはずである。実際、その方が手っ取り早いのではとさえ、私には想える。
乙女ゲームは――その下僕たる王太子は――親友たちが死んだことを知らないのだろうか? 確かに、それは隠され、あえてこちらからは報せておらぬ。
ただ、それはありそうになかった。知らぬならば、親友たちの行方を問うはずである。それを知るからこそ、問わぬのである。問う必要が無いのである。
つまり、こちらのなしたことを知りつつ、あえてそれは不問にし、シナリオを代えて来た。ゆえにこそ、それに乗るならば、と私は考えたのである。
つまり勝算がない訳ではないのである!
乙女ゲームの鼻を明かしてやろうという訳である!
何せ私は孫子様に
いけない。いけない。調子に乗っては。
でも負ける訳には行かないのである!
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