第14話

 とりあえず、まずは分かっておることから、整理して行くことにしよう。


――私が反証を得て、審問の場に赴けば、むしろその反証をもって、私の密通の証しとして、有罪。

――反証を得られぬままに、審問の場に赴けば、反証の無いことをもって、有罪。

――私が審問の場に赴かなければ、訴訟の罪科を認めたに等しいとして、やはり有罪。


 いずれの場合でも、私は断罪エンド確定。今風に言えば、まさに『詰んでいる』という奴だ。


 乙女ゲームではどうなったか。

 国軍の進駐。

 なるほど、そういうこと。少なくとも、乙女ゲームは密通による『婚約破棄』イベントと『断罪』イベントまでは確実になしうると見込んだ訳だ。

 後は、『処刑』イベント。そのためには、私を捕らえねばならない。審問のために、私が王府に赴くなら、ことはたやすいが。ここに留まるなら、そうはならぬ。


 国軍の派遣には、入念な準備が必要であろう。


 更に言えば、奇襲が良い。少なくとも、公爵家に防備を固めさせてはいけないし、その時間を与えてもいけない。その方が、国軍の損害は減らせるし、『公爵領の制圧』と『私を捕らえること』、その2件の成功率も上がるだろう。


 出頭期日前に、国軍が動くことはないだろうと想うが、

――その翌日には動かせるように、ということ?

――あるいは公爵領との境に留めておき、期日を過ぎた時点で進駐するの?


 いずれにしろ、2ヶ月もあれば、軍征のために、十分な準備をかけられるということに他ならぬ。


 そしてそれは、

――私が反証を得ようと四苦八苦しておる間に、

――あるいは反証を得て、すっかり安心しておる間に

――準備を終わらせることができるということでもあった。


 そして、私が審問に赴いた場合でも、国軍の派遣は必要と想われた。私がそこで有罪となり、処刑を言い渡されれば、父上が怒り心頭に発し、反乱を起こす。あの溺愛振りである。それは十分にあり得る。その道を封じるためにも。


 なるほど。乙女ゲームの周到な計画という奴だ。

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