第5話
国軍は攻めて来るのだろうか?
正直、分からなかった。
もちろん、私の胸には、ずっと敵国の皇子の存在があった。ゲーム内のエリザベト同様、それを頼りに敵国に赴き援軍を頼もうか?
公爵領は敵国と接しておる。行こうと想えば、いつでも行ける。うまくすれば、それで父上も、おふたりも、召し使いさんも、他の父上の配下、そして公爵領の人々、無論私自身も守ることができるのでは?と。
正直、迷う。
でも、それは乙女ゲームのまさに思う壺であるかもしれない。
何せ、『皇子』は、エリザベトにとっての断罪処刑フラグである。『王太子の親友たち』並みに警戒しなければならないのは確かだ。
とにかく前回のことで分かったのは、乙女ゲームはシナリオに変更は加えるも、基本的なイベントの流れは、できるだけ守ろうとするということだった。
つまり、シナリオの変更後も、
――『王太子の親友たちとの情交』のゆえに、
――『エリザベトはみさおを保つを得ず』、
――それで『婚約破棄』へと至るという流れは保たれた。
ただ今回のことで、ゲーム側は『親友たちとの情交』というカードを完全に失った。そこで考えられる乙女ゲームの出方は3つ。
まず、このカードを失ったゆえに、ゲーム側は万事休す、打つ手無しとなり、あきらめてくれることである。もちろん、これが私たちにとって、1番良いことであるが。これまでのことを考えると、これに期待する気にはならなかった。
実際、ありそうなのは次の2つ。
1つは、あくまで『婚約破棄』イベントを経て、国軍を進駐させ、『断罪処刑』へ至ること。この場合、私が敵の皇子を頼って行くことは、乙女ゲームにとって、これほどありがたい動きはないとなってしまう。ゆえに、これはなすべきではないとなる。
もう一つ。『婚約破棄』イベントをすっ飛ばして、今回の親友たちの殺害を理由に国軍を発して来るなら、私は1刻も早く敵国に赴いた方が良いとなる。
どちらもあり得た。そこで私の結論は、前回と同じく『待つ』だった。乙女ゲームの出方を見極める。ただ今回は待てば良いとは想われなかった。
まず、防備を固める進言は済ませた。
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