第7話

 朝、今度は声と共に目覚める。


「お嬢様。お嬢様」


 そう。私は夢から覚めなかった。

 今日で2日目。

 少しばかりいやな予感がする。

 でも、そんなこと、あり得ない。

 アラフォーにもなって、小説やマンガの読み過ぎ!


 とはいえ、もしそうならと想い、情報収集を図ることにする。

 万が一ということもあるから。

 いや、ないって。

 実のところは暇つぶしである。

 だって本当にすることがないんだもの。

 乙女ゲームの貴族のお嬢様って、実際なってみると、退屈なのね。

 いやいや、そんなはずはない。

 私の夢の中ではと急ぎ修正する。


 まず、これが乙女ゲームのどの段階にあるのか?

 それを把握する必要があった。

 昨日のエリザベトの父上はデレデレするだけで、何の参考になる情報ももたらさなかった。

 案外、エリザベトの父上への態度は正しいのかとも想う。

 とはいえ、実際の私はもう40。

 この父上の方が、年が近いのである。

 もし私に若い息子がおったなら、やはりデレデレするであろう。


(気持ちは分かるぞ。親父おやじどの)


 という奴である。

 そこで私は同年配の男女として、普通に父上の相手をする。

 良好な父上と娘の仲。

 とすれば、必要な情報は得られるはずと期待する。

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