うちの姉ちゃんシリーズ
風と空
第1話 うちの姉ちゃん 大事なのは?
男なら誰でも振り返る女性っているよな。
好みもあるだろうけどさ。
どんな時も笑顔の女性
魅惑的な体型
近くに来ると良い匂いがする
いつも弁当作ってくれそう
優しい心根の良い人
そんな人実在するか?って思うだろ?
いるんだよ、そう言われている人がここに。
「あ〜!もう!何だよこの部屋!」
俺が一人暮らししてから、久しぶりに訪れたマンション。
「
叫んだ俺に抱きついてきた女性が俺の姉。
しかも理想の女性って言われているらしい。
が、俺からしたらそんなの偽物の仮面被ってるもんだ。
実際の姉ちゃんは……
「あー、また洗濯物山にして!しかも色分けしなかっただろ!せっかくの白シャツに色ついてるぞ!あとゴミはゴミ箱に入れろって言ってるだろ!なんで食器まで床に積み重なってんだよ!」
「侑ちゃん、侑ちゃん。駄目よお。もっと大きな気持ちで見ないと。ホラ、ここに座ると全部座ったままで手が届くのよ。ほらこのシュークリームの袋だって、食べ物置けるじゃない」
確かに見た目は良いが、家に帰って来るととことん面倒くさがる。弁当だって俺が作ったものをたまに持って会社に行ってるだけだ。
俺は慣れているからいい。
が、初めて姉の部屋に訪れる人は皆一様に逃げて行く。
この見た目だし彼氏はすぐ出来るが、続かない。
なぜならうちの姉ちゃんは超絶不器用だ。
料理や家事に関しては全くできない。
散らかしている自覚が本人にない。
俺、この間かなり綺麗にして行ったんだぞ……
腐海を見ている様だ。この世の果てだな、ここは。
来る度に俺の中に絶望感が生まれる。
「侑ちゃん、せっかくの日曜日よお。しかもお散歩日和!
ねぇ、どっかに出かけようか?」
そんな俺に構わず呑気な事をいう姉ちゃん。
本当、得な性格してんだよ。
なんつーか憎みきれない性格っていうのかな。
まあ、俺高ニの時両親共事故で他界してから、当時大学一年の姉ちゃん必死になって俺を育ててくれたからなぁ。
保険金やら貯蓄やらもあったけど、バイトして節約しようとしたりして俺を大学まで入れてくれた。いや、実際家庭の財布の紐は俺が握っていたけど。
姉ちゃんに任せてみろ。
「侑ちゃん!今日お肉食べよっか。お肉屋さんで特上サーロインステーキ買ってきたんだよ!美味しそうでしょう」
「侑ちゃん!見てみて!お寿司屋さんでおりに詰めてもらったの!たまには上寿司でも良いでしょう?」
「見て〜!でっかいカニ!侑ちゃん食べよ〜!」
そうこの姉は食べる事が好きだ。
香水やブランド品や服や靴には余り興味が無いらしい。
まあ、話はそれた。
まずはこの世の果てかと思われるこの部屋。
なんとかしないとな。
「姉ちゃん、俺片付けておくから生ラーメン買ってきてくれよ」
「あるよー、冷蔵庫の中に。丁度二人分無い〜?」
「へえ珍しい」
姉にしては良い物が入っているらしい。
「姉ちゃん飲み物は?」
「そうだねぇ。私いると邪魔だろうし、ちょっとそこのコンビニに行ってこよっか」
「あ、じゃあ俺コーラ」
「はーい。行って来るね〜」
バタン……
良し!やるか!
腕まくりをしてまずは洗濯まわさないとな、と気合いを入れる。
もう女物の下着だろうが、俺には関係ない。
小山なっている下着を突っ込み、ブラはネットに入れて洗濯機を回す。
台所もだけどリビングも仕舞う物、捨てるものと仕分けしてさっさと場所を作る。ソファーの上は脱いだ洋服の山。
あー、スーツ皺なってるよ。ったく。
本と雑誌あちこちに散らばっているのを片付けてスペースができた頃に姉ちゃんが帰ってきた。
「ただいま〜。ねぇ侑ちゃん。たまにはお姉ちゃんお昼作ってあげる」
凄く珍しく姉ちゃんが言って来る。…… 大丈夫か?
「すっごい簡単なの!あ、でも侑ちゃん足りなきゃおにぎりも買ってきたからね」
会社の人から花の様だと言われる笑顔を見せて、台所へと向かう姉ちゃん。待て!まだそっち片付けてない!
ふう…… なんとか片付いた。
ま、まぁ大丈夫だろ。麺、茹でるくらい。
少しソワソワしながら片付けていると、「侑ちゃん出来たよ〜」と俺を呼ぶ声がする。
テーブルに行ってみると姉ちゃんが手にしてるのはジッ◯ロック大きめサイズ。
「はーい、これ持って」
俺にジップ◯ック持たせて、姉ちゃんは茹でた麺だけ中に入れる。後は買って来たチャーシュー、メンマ、茹で卵を入れている。
「でね。これをかけるの」
姉ちゃんは小瓶を開けて油みたいなものをかける。
あ、油そばか!
「で、混ぜ合わせて〜、はい出来た!」
箸でわざわざ混ぜて渡してくれたんだが……
見た目がラーメンから丼を除いた様だった。
「美味しいんだよ〜。で、食べたらポイッと捨てれるでしょう」
自慢気にいう姉ちゃんに俺は苦笑する。
のんびり屋で不器用で面倒臭がりで、それでいてへんなとこで優しい姉ちゃん。
こんな姉ちゃんに俺は惚れてるんだよなぁ。
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