第7話 ペリオリズモス王国に着きました

「オリビア、ミシュラーノ公爵といたのだな。探したぞ」


レックス様と楽しく話をしていると、お父様とお母様がやって来た。


「お父様、レックス様に色々とペリオリズモス王国の事を聞いていたのよ」


「そう、レックス様…いいえ、ミシュラーノ公爵、娘の相手をしていただき、ありがとうございました。オリビア、レックス様ではなく、ミシュラーノ公爵と呼びなさい。いいわね」


「ミシュラーノ公爵様か、レックス様の方が呼びやすいけれど、分かったわ」


「それで、ミシュラーノ公爵とはどんな話をしたのだい?」


「色々よ。ね、ミシュラーノ公爵様。そうそう、ミシュラーノ公爵様のお家には、私と同じ年の息子さんがいらっしゃるのですって。ねえ、お父様、国に帰ったら、公爵様の息子さんとお友達になりたいわ。いいでしょう?」


お父様に訴えた。でも、なぜかミシュラーノ公爵様をジト目で睨んでいる。どうしたのかしら?


「オリビア、君はずっとエレフセリア王国の小さな村で、平民として暮らしていたのだ。でもこれからは、ペリオリズモス王国の王女として生きなければいけない。王族のしきたりなど、覚えなければいけない事がたくさんあるんだよ。だからまずは、王女として恥ずかしくない様に、しっかりと勉強を頑張ろう。それに、ペリオリズモス王国にも慣れないといけないし。友達は、それから作ってもいいだろう?」


お父様が優しく語り掛けてきた。確かに私は今まで平民として生きて来たものね。それに、あまりお父様を困らせてはいけないし…


「分かったわ…お父様。まずはペリオリズモス王国の王女として、勉強を頑張るわ。でも、私に王女なんて務まるかしら?」


「心配しなくても大丈夫だよ。家庭教師も付ける予定だし。それに何より、君は私の傍にいてくれたら、それだけで十分だ」


それはそれは優しそうに微笑んでくれたお父様。


「さあ、そろそろお昼ご飯にしよう」


もうお昼なのね。


「ミシュラーノ公爵様、楽しい時間をありがとうございました。また後で、お話しましょうね」


ミシュラーノ公爵様に挨拶をし、お父様とお母様と一緒に昼食を頂いた。飛行船の中なのに、これまた豪華な食事だ。食後は大好きな恋愛小説を読んで過ごす。


昨日1冊だけ小説を持ってきておいてよかったわ。そういえば、ペリオリズモス王国にも図書館はあるわよね。心配になってお父様に聞いてみた。すると


「王宮に大きな図書館があるから、好きなだけ本を読んだらいい。もし欲しい本がないなら、取り寄せてもいいし。そうだ、オリビアの部屋に、大きな本棚を準備しよう。そうすれば、いちいち図書館に行かなくてもいいだろう」


と、言っていた。私の部屋に大きな本棚か。それは嬉しいわ。どうやらお父様は、私に甘い様だ。


「オリビア、小説ばかり読んでいてはダメよ。あなたが読んでいる小説は、恋愛小説でしょう。まだあなたには早いと、何度も言っているでしょう。オーフェン様も、あまりオリビアを甘やかさないで下さい!」


すかさずお母様が怒っている。もう、すぐに大人は“あなたにはまだ早い”て言うのだから…


「シャリー、本を読むことはいい事じゃないか。それに、私はずっとオリビアと離れ離れだったんだよ。多少甘やかしてしまうのは、許して欲しい」


そう言われては、お母様も何も言い返せない様だ。お母様が申し訳なさそうに俯いてしまった。


「シャリー、私はそれほどまでに、君とオリビアがいない時間は辛いものだったんだ。もう二度と、私の傍から離れないでくれ…もちろん、離れられない様に対応はするつもりだが…」


お父様がニヤリと笑った。


「陛下、お取込み中失礼いたします。ペリオリズモス王国に入りましたので、着陸の準備に入ります。どうか、お席にお付きください」


どうやらもうペリオリズモス王国に着いたようだ。出発時と同じように、お父様のお膝に座る。窓を覗くと、既に真っ暗だ。ただ美しくライトアップされた街並みと、見た事もないほど大きなお城が目に入った。


「お父様、もしかしてあの立派なお城が、お父様のお家?」


「ああ、そうだよ。今日からオリビアの家でもある」


あんなにも大きなお城で暮らすだなんて。お父様って本当に王様なのね…


ゆっくりと降りていく飛行船。着陸時、少しガタガタと揺れたが、それでも怖いと感じるほどではなかった。


「さあ、シャリー、オリビア、行こうか」


お父様に促され、出口へと向かう。なんだか緊張して来て、ついお母様にしがみついてしまう。そんな私を見たお父様が抱っこしてくれた。


昨日からお父様に抱かれてばかりだ。でも、お父様の腕の中は、なんだか安心する。ギューッと首にしがみつき、そのまま飛行船から降りた。


すると、たくさんの人たちが集まっていた。


「おかえりなさいませ、陛下。お隣にいらっしゃるのは、間違いない、シャリー様だ…本当にシャリー様をお連れになって帰っていらしたのですね」


「シャリー様、ご無事で何よりです」


沢山の男性たちが、なぜか喜んでいる。どうやらお母様がいる事が、嬉しい様だ。


「陛下が抱っこされていらっしゃるお子様は?」


1人の男性が、お父様に話しかけている。


「この子はオリビア。シャリーが産んだ、私の子だ。9歳になる」


「陛下の!よく見たら、王家の証でもある、赤い瞳をしていらっしゃる。まさか、シャリー様が陛下のお子を。これはめでたい!シャリー様だけでなく、王女様までお帰りとは」


近くにいた男性たちが、急に盛り上がりだした。


「皆の者、今日は出迎えご苦労だった。ただ…シャリーもオリビアも長旅で疲れている。また日を改めて2人を紹介しよう」


よくわからないが、どうやら私、この国の人たちに受け入れられたみたい。よかったわ。

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