第183話 《Black-Red ワルキューレ》のクラン会議・後編
若手を組み込み新たに編成したチームの探索状況を一通り聞いてきた。このクラン会議に参加したチームリーダーの意識も向上したように感じる。
「今後のクラン《Black-Red ワルキューレ》について皆に伝えておくことがある。今から半年から一年後を目処に、うちの最高戦力を集めてトップチームを編成する予定だ。そのチームでAランクダンジョンの完全攻略を目指す」
皆が息が止まるほど驚いている。
「美紅、ほんまか?また上を目指すんか?」
「ああ、止まったままではいられないからな。現時点では前衛のアタッカーは世那と音乃、後衛のアタッカーが奈緒と凛、斥候が私、もう一人のメンバーは未定だ。今名前を挙げた五人も確定している訳ではないし、未定のひと枠にはポジションも含めて直前まで誰が選ばれるのかは私にも分からない。今日の会議に集まってもらったメンバーは、全員が候補になっていることを意識していてほしい。Aランクダンジョンの中層以降は、個人の力だけで攻略できるほど甘い場所ではない。周りをよく見て、どんな苦しい場面でも力を合わせて対処できるようにならないと、すぐに行き詰まってしまう所だ。自分の最大の力を出しながら、パーティメンバーの最大の力を引き出せるような、そんな探索者になってほしいと思っている。仮にトップチームに選ばれなかったとしても、君達が《Black-Red ワルキューレ》を引っ張っていく存在になるのは間違いないんだ。現時点でのメンバーとして挙げた者達は、そのままトップチームとしてAランクダンジョンに臨んでも、これが最後の挑戦になるだろう。そのあとを引き継ぐのは君達なんだ。君達の成長に期待している」
チームリーダーに指名されてこの会議に参加している者は、希望に満ちた良い表情をしている。
「ヤバいなー、久しぶりに鳥肌が立ったわ。ハハ、最後の挑戦か?絶対にメンバーに選ばれんと、死んでも死に切れんなー」
「あたしもや。世那と美紅との探索のチャンスを逃す気はないで」
このタイミングでAランクダンジョンの完全攻略の計画を話したことが、《Black-Red ワルキューレ》を良い方向へと導いてくれると信じたい。
会議が始まる前にアイテムボックスに入れていた順位が分かる機械を取り出し話をする。
「この機械は、日本の探索者の中での自分の順位を教えてくれる物だ。今までは敢えて皆には使わせなかったが、これからはここにいるメンバーには使用を許可する。探索の励みにしてほしい。勘違いしないでほしいが、順位が上のものが必ずトップチームに選ばれる訳ではない。それに無理矢理人の順位を聞くことは禁止する。順位を他の人と比べて優越感に浸ったり、落ち込んだりするようなそんな小さな人間にはなってほしくない。これはあくまでも自分の成長を確かめるものだ。今の自分の順位を一ヶ月後の自分が越えられるように努力してほしい。使い方は簡単だ」
実際に私のダンジョンカードを機械に通して見せる。
「このようにダンジョンカードを通すだけだ。そうすると順位が表示さ、れ、る………」
「美紅、どうした?」
「スマン、びっくりしてしまった。私は数日前までは九位だったんだ。それが今調べたら八位になっている」
元々が八位の人とは僅差だったのだろうが、まさかのサプライズだ。武器の変更により攻撃の幅が広がったことが原因なのか、【双剣術】スキルを獲得してからのソロでの探索時の戦闘が原因なのかは分からないが、私が成長したのは確かなことだ。私はまだ強くなれるんだ。これも麟瞳さんのお陰であることは間違いないな。
「このように自分が成長していることが分かれば、本当に嬉しいものだな。この機械は夕風に管理してもらう。自分の順位を調べたら、その場で夕風に申告してもらう。結果は世那と私にしか伝わらないようにするから安心してほしい」
「美紅は日本で八位なんか?」
「そうだな、まだ七人も私より強い人がいるな」
「凄いで、世那は何位なんや?」
「それは個人情報だから私からは言えないが、腹立つことに私よりは今のところ強いな」
「そうかー、やっぱりあたしらのリーダー達は凄かったんやなー。あたしも頑張るで、足手まといにはなりとうないからな」
これで伝えたいことは、全て伝えることが出来たかな。
「最後にマジックアイテムの使用者を決めたいと思う。私は今五つのマジックアイテムの指輪を持ってきている。それぞれの効果を言うと、魔力回復、魔力消費軽減、会心率アップ、俊敏、そして回復魔法だ」
「どれも良さそうな効果を持っとるなー。どうやって使用者を決めるんや」
「回復魔法と魔力消費軽減の指輪は凛に装備してもらう。凛は魔力も多いし、魔力回復の指輪は既に持っている。これから凛には攻撃魔法で魔物を倒すだけでなく、回復魔法で味方の回復もおこなうようにしてもらう。音乃、普段の探索時から練習するように伝えておいてほしい」
「分かったわ。確かにAランクダンジョンの探索に回復役がおったら安心できるな」
「残りの指輪は、ここに集まっているメンバーの中から希望者を募り、渡したいと思う。因みに会心率アップの指輪は打撃系にしか効果がないから近接アタッカー専用だ」
「そんなん誰でもほしいやろ」
「希望者が複数の場合はジャンケンで決めよう。これからもマジックアイテムの指輪は渡すことが出来ると思う。一度指輪を貰った者は次の時には除外して貰っていない者で所有者を決めていく。自分に本当に必要な指輪なのかを良く考えて希望するように、後で取り替えはしないからな」
ジャンケンは異様に盛り上がり、指輪を獲得した者は派手なガッツポーズをしている。マジックアイテムを得た時はこれが普通の反応だなと少し安心した。《花鳥風月》のメンバーと一緒にいると普通がよく分からなくなるな。
聞き耳の指輪は恵梨花に渡そうと手元に残している。渡した時に、どんな反応をするのか楽しみだ。
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