第172話 探索をする前に

 美紅さんが探索者センターに向かった後に、《千紫万紅》と《カラフルワールド》でパーティを組み直しダンジョンの中に再入場した。ソロで転移してきた世那さんと共に元々携帯ハウスを設置していた場所へと恵梨花に誘導されて来た。念のために一旦縮小し回収していた携帯ハウスを設置し直して、結界と隠蔽のスイッチを押して、イベント満載の長かった一日を終えることが出来たと安堵した。


 僕は風呂に入った後に、リビングのソファーでボーッとしていた。


「ただいま。麟瞳さんは疲れているようだな。先に休んでもらえば良かったのに………待ってくれていたんだな、ありがとう」

「お帰りなさい。いろいろ任せてしまって申し訳ないです。お風呂、皆がお先にいただきました。美紅さんもお風呂に入って休んでください」

「ちょっと報告しておきたいことがあるんだ、先に世那と君には伝えておきたい」

「じゃあ、飲み物でも用意しますよ。マジックアイテムの魔導ジューサーを出しておいてもらえば、風呂上がりのジュースを用意しておきますよ」

「では、お言葉に甘えて、先に風呂に入らせてもらおうか。ジュースは飲みたいと思っていたんだ」


 風呂上がりの美紅さんが世那さんと共にリビングへとやって来た。僕はすかさず収納していたジュースをお二人の前に出す。


「今日は桃ジュースにしました。これを飲みながら話を聞きますね」


 お二人はジュースを一口飲んで驚いている。ですよね~、本当に美味しいんだこのジュースは。


「美紅さん、報告しておきたいことってなんですか?」

「ああ、そうだな………しかし、驚きの美味しさだな。麟瞳さんが魔導ジューサーを手に入れて大喜びするのも納得だ」

「何杯でも飲めそうやで、ほんま美味しいわ」

「すまない。報告したいのは、さっき探索者センターで支部長から聞いたことなんだ。探索者省がここの探索者センターに世那と接触したいと連絡をしてきたらしいんだ。この福岡ダンジョンに世那が来ていることは、あの喫茶コーナーでの騒動でばれているらしい」

「あの美姫と詩音の元パーティメンバーですか?あれは目立ちましたよね」

「あれはウチのせいやないで、あの失礼な奴が勝手にウチの名を言うたからやで」

「世那さん、分かってますよ。でも、探索者省が世那さんに接触したいということは《Black-Red ワルキューレ》さんの事で何かあるんですよね。僕に携帯ハウスを貸してほしいという話ではなさそうですね」

「支部長の話では、探索者省は切羽詰まっているように感じたらしいから、Aランクダンジョンの撤退についての話が有力だと思う」

「まあそうやろな。美紅は支部長にどう言うてきたんや」

「《花鳥風月》のパーティが完全攻略するまではダンジョンを出ないから、私達には会うことができていないと言ってほしいとお願いしてきた」

「分かったわ。一応、麟瞳等もダンジョンからはあまり出ん方がええやろう。携帯ハウスを諦めてへんかもしれへんからな」


 明日の朝、全員に注意するということで話は終わった。


「では、解散して休みましょう。今日はうちのメンバーとパーティを組んでボス部屋を攻略していただき、ありがとうございました」

「礼には及ばないよ。麟瞳さん、このグローブをプレゼントするよ」


 滅茶苦茶嬉しいプレゼントだ。明日から野菜やフルーツをどうやって取ろうか、それとも諦めようかと悩んでいたんだよね、ありがたいよ。


「このグローブで取ったフルーツで、またジュースを作ってほしいんだが、良いだろうか?」

「喜んで作りますよ。プレゼントありがとうございます」

「ジュースは私の分だけ作ってくれれば良いから、世那の分は要らないからな」

「なんでやね~ん!」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 昨日も星のスイッチを押して寝たが、やっぱり起きたときに疲れが取れているように感じた。もう少し続けてみてから皆に聞いてみようと思うが、おそらくは合っているだろう。


 今日も七時に朝御飯を食べることにしている。時間が近づくにつれ、メンバーも集まってきて、七時にはちゃんと全員集まった。皐月はギリギリセーフだったよ。そして、全員で朝御飯を美味しく頂いた。少し食後の休憩を取った後、ダンジョン装備に着替えてもう一度集まった。昨日の探索者省の話をして、安易にダンジョンの外へ出ないことを伝えた後に、パーティ毎に分かれてミーティングをおこなう。


「今日から本格的にこのダンジョンを攻略していく。僕達の目標は完全攻略だが、皆の力で目標を達成しよう。特に三十階層までは、正輝と僕はサブアタッカーだと思ってね。更に、二十階層までの僕はトレントモドキ専用探索者と思ってくれていいよ」

「それは私と詩音の為でしょうか?」

「そうだね。三十階層のボス部屋の情報を見たよ。苦手意識を払拭しよう」

「分かりました。ありがとうございます」

「私も頑張るっす」

「詩音はミスリルの投擲球の血液登録はしたのか?」

「はい、したっす。美紅様から託された投擲球っすから、使いこなせるように頑張るっす」

「攻撃の幅が広がるのは良いけど、あまりこだわらないように。詩音の良さは多彩な攻撃を繰り出すことだからね」

「分かったっす」

「よし、皆のスキルの確認をしておこう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ランク:B


名 前:龍泉 綾芽


スキル:身体強化 薙刀術 払い 槍術

    二連突き 火魔法 気配察知


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 綾芽とは何度もパーティを組んでダンジョンを探索したが、クラン《花鳥風月》を設立してからは初めてパーティを組むんじゃないかな。綾芽のダンジョンカードを初めて見たよ。


 パーティメンバー全員でスキル情報は共有できた。皐月の【先読み】や詩音の【瞬間移動】はかなり気になるね。スキルは使うことで熟練度が上がる。しっかりと見せてもらうとしよう。さあ、探索の始まりだ。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る