第133話 ゴブリン、オーガとの終わらない戦闘
壁の仕掛けは僕の【全解除】スキルで解いた。壁を越えると通路が繋がっている。今度は何処に繋がっているのだろうか?
ここからは四人の方々もヘルメットを装備し本気モードになった。ヘルメットがあるのなら言ってほしかったよ。耳栓しなくてよかったんじゃないですか?こんなこと面と向かって言えないですけどね。
先頭は【用意周到】の美紅さん、斥候職の最高峰だ。続いて最高峰のアタッカーのお二人【唯一無二】の世那さんと【一騎当千】の加納さんが左右に別れて進む。僕がその後に続き、最後に【才気煥発】の榊さん、こちらはオールラウンダー、何をやっても一流の腕前だ。ドリームパーティが本気で探索を始めた。
偵察に出ていた美紅さんが戻ってきた。
「普通の迷宮通路にしか思えないな。オーガが出てくる」
「オーガですか?青いオーガが出てきたときも同じでした。嫌な予感がします」
「とりあえず進むぞ。行ってみないと分からないだろ。青いオーガにも会ってみたいしな」
加納さん、僕は全然会いたくないです。そんな僕の気持ちとは関係なく探索が始まった。
「五体のオーガだ。罠を真ん中に仕掛けた」
先行していた美紅さんが戻り際に言う。皆が戦闘体制に入る。接近して来るオーガの一体が突然燃え上がった。それを合図にアタッカーが動き出す。どうやってオーガに近づいたのか見えない一瞬の出来事。すべてのオーガは消えていく。
「普通のオーガだな。進もう」
何事も無かったように加納さんが言い、また美紅さんが先行していく。
しばらく戦闘をした後に広い場所に出た。
「この空間がよく分からない。何もないが嫌な予感がする」
「せやなあ、広いだけではなさそうや」
広い円形の空間、誘われるように真ん中に向かって進んで行った。
「囲まれてます」
「ああ、突然現れた」
全方向にゴブリンとオーガが現れた。
「帰還石を使いましょうか?」
「もう試した」
「でも他のマジックアイテムは使えるようですが、帰還石はダメなんですか」
「ああ、そうみたいだ」
「ここまでの数だとフォーメーションは関係ないな。各自違う方向に向かおう。龍泉君は大丈夫そうかい?」
「はい、頑張ります」
「キングも混ざっているようだ。そちらには世那と加納さんが向かってくれ」
「了解だ。楽しめそうだ」
「ウチも分かったわ」
ゴブリンキングにオーガキングもいるが、他の上位種も混在し何処に向かっても数がハンパない。僕の今までの戦闘の中では一番の難関だ。
「よし、行くぞ!」
加納さんの合図で動き出した。五角形の頂点に向かって進む。待つという選択肢はない。戦闘の主導権は渡せない。雷魔法を纏い高速移動で接近していく。近づきながら刀に魔力を流し刀を横薙に全力で振る。ボス部屋ではないが近くに仲間はいない。数を減らさないと近接戦闘は始められない。雷鳴が轟き稲妻が走る。
かなりの数は減らせたようだが、まだまだ残っている。目に見える遠距離攻撃をして来る敵には魔法を発動しながら、高速移動を維持し刀で斬り捨てていく。混戦の中で攻撃を何度も受ける。致命傷にはならないように躱そうとするが、途切れることなく攻撃がやってくる。隙を見つけて少し距離を取り、高級体力ポーションを飲む。高級魔力ポーションも補給しながら、終わらない戦闘を繰り返す。
いくら倒しても次々に現れる敵を相手に、それでも魔法と刀で応戦していく。爆炎魔法のスクロール、氷結魔法のスクロール、惜し気もなく投入していく。
「ゴブリンキング倒したで」
「オーガキングの首を取ったぞ」
かなり離れているはずなのに声が届いた。心強い言葉が届いた。
召喚でもされていたのだろうか。キング種を倒した声を聞いてから、倒していく度に数が減っている気がする。もう一踏ん張りだ。最後の力を振り絞って、高速移動をしながら魔法を撃ち、刀を振りつづける。何も聞こえなくなった。最後のオーガの首を落とした。そして僕の記憶はそこで途切れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「リーダーが起きました。世那さんに知らせて下さい!」
美姫の声が聞こえる。そうだ僕は戦っていたんだ。身体が思うように動かない。
「麟瞳、やっと起きたんか。待っとったで」
世那さんが僕を待っていたようだ。何のことだろう。とりあえず身体を起こして、高級体力ポーションを飲む。
「食事を食べはるか?」
「いえ、寝起きなんで食欲がないです」
「そうか?話をしたいんやが、移動は出来るか?」
「ええ、大丈夫そうです」
クランマスター室に移動してソファーに座る。部屋の中にはこの前パーティを組んだ五人だけ、他の人は誰もいない。
「身体は大丈夫か?」
「ええ、何とか動かせるぐらいですが、大丈夫です」
「龍泉さんはどこまで覚えている?」
「僕が相手をしていた魔物がいなくなったところで記憶が途切れてます」
「そうか、そのあとに青いオーガが現れたんだ」
青いオーガが現れ、世那さんと加納さんが倒そうと向かって行ったが、軽くあしらわれたそうだ。疲れもあり、本来の戦闘が出来ず、最悪の事態も覚悟したが青いオーガは戦闘せずに話しはじめた。二位と三位と七位と九位、皆が束になってかかってもSランク大阪ダンジョンの青いオーガには届かない。僕を育てろ。強くして挑戦して来い。そんな話をしたそうだ。
「なんで僕なんですか?」
「分からないが、君には強くなる可能性があるからではないのか?」
「あの青いオーガは強いな。勝てるイメージが浮かんで来ない。二位の俺でも全く通用しなかった」
「何を言うとんねん。二位のウチがいくら疲れとったとしても、歯が立たなんだな。もっと強うならんとあかんわ」
「ああ、二位の俺も強くなると約束するよ」
「何を張り合ってるんだよ。二位は俺かも知れないぞ」
「その順位は何ですか?青いオーガは強さが分かるんですか?」
「そんな口ぶりだったな」
「青いオーガは何がしたいんでしょうか?」
「さあな、何なんだろうな」
結局はこの前と同じで何も分からない。ただ僕に強くなれと言っているだけのようだ。
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