第122話 魔法杖の使い手

 岡山ダンジョンでの探索を終え、クランハウスに戻って来て風呂で汗を流す。男は一人、大きな風呂に一人だけという贅沢な時間を過ごした。


「改めまして、葵美琴あおいみことです。今日からお世話になります」


 早速、真琴の母親が今日の朝に面接を受けるために来てくれた。僕と真姫と僕の母さんで面接をして即決し、クランハウスの家事を手伝ってもらうことになった。折角なので今日から働いて、真琴を車に乗せて一緒に帰ると言う。真琴のお父さんは大丈夫なのだろうか?


「部屋が広くて大きいから大変だったでしょう?葵さんも適度に手を抜いて、気楽に働いてくださいね」

「葵は娘と同じですから、美琴と呼んでください。手は抜きませんよ。今日は優里さんと楽しく過ごさせていただきました」

「美琴さんと呼ばせてもらいますね。真琴のお父さんはいいんですか?こんなに長くクランハウスに居てもらうと晩御飯とか大変ですよね」

「それは優里さんと同じですから何とかします」

「僕の父は仕事の後にここに来て、晩御飯を食べてからお風呂に入って家に帰ります。ちょっと公私混同になってますが、それが僕の母の要望だったので皆に認めてもらいました。良かったら、葵家もそうできるならこちらも助かりますが、まあお父さんの仕事にもよりますよね」

「少し遅くなる日があっても良いなら助かります。でも、本当に良いんですか?」

「一応皆に確認しますが大丈夫だと思いますよ」


 今更だが優里ゆりというのは僕の母さんの名前、因みに僕の父さんの名前は龍泉柊たつみひいらぎという。二人とも花の名前だから、生まれてくる子供にも花の名前を付けたと幼い頃に聞いたことがある。


 晩御飯になった。席は自由だ。僕は仕事帰りの父さん、それから母さんと美琴さんと一緒に食事をした。


「美琴さん、大丈夫でしたよ。明日からでも良いですし、お酒が好きなら僕の父と飲んでくだされば、酔っ払いの相手をしなくてすみますよ。でも、車で帰るのなら飲めませんね」

「私が運転するから大丈夫ですけど、皆に迷惑をかけそうで心配です」

「もうここに酔っ払いが居ますけどね。ちゃんと先に風呂に入っているのが計算高いですよね。二人で噛み合わない会話でもしてもらえば良いんじゃないですか?」


 一応父さんの食費と飲み代は出しているよ。葵家も同じように父親の食費と飲み代は出してくれるそうだ。


 今日は食後に会議室を使って反省会を行った。デザートと飲み物付き、今日の探索で気になったこと、今後の課題をパーティ毎に確認して、最後に魔法杖について話し合う。


「使ってみないと分からないが、寝かせて置くにはもったいないマジックアイテムだ。魔力の消費量も試して見ないと分からない。誰が使う?」

「リーダーが使えば良いと思います。魔力量も一番多いですし、適任だと思います」

「いや、僕は魔法特化になるつもりはないから他の人で考える方が良いよ。詩音は特殊だけど槍使いが四人もいるから、その中の誰かが魔法杖を使えば良いと思っているんだけど、やってみたい人はいるかな?」

「私が試してみて良いかな?今日も三人で槍で攻撃したけど、私の攻撃は二人より弱くて悩んでたわ。是非、魔法杖を試させてほしい。もっと戦力になれるように頑張るわ」


 立候補したのは真姫だった。良い選択かもしれない。【並列思考】ギフトとの相性も良さそうに感じる。魔力消費量も気になるところだが、魔法杖と水魔法の槍で頑張ってもらおう。ダメならまたその時考えれば良いよね。


「流石、麟瞳さんだわ。《桜花の誓い》で二ヶ月かけて貯めたポーションの四分の一が一日で貯まったわね。更に中級ポーションと高級ポーションまで五本ずつある。幸運のミサンガがあっても麟瞳さんの一日が私達の半月と同じなのよ。他のパーティだとどうなのかしら?ポーションを買わなくて済むのも有り難いわ」


 確かに僕は岡山ダンジョンと特別相性が良い。ポーションもそうだが、マジックアイテムの装備品はほとんどこのダンジョンから出て来た物を使っている。この一ヶ月で何が出て来るか楽しみだね。


 会議室で反省会を終えて、さあ家へと帰ろう。えっ、僕と真琴以外は帰らないの?家の人が心配するよ?連絡をしたから良いんだって、綾芽もクランハウスに泊まるそうだ。


「一人暮らしに憧れてたんだよ」


 これは一人暮らしとは言わないと思うよ。明日も時間通りにダンジョンに行くからちゃんと起きるようにね、皐月。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る