第118話 希少金属の納品依頼
「ミスリルの延べ棒が宝箱から出てきたという情報は、探索者省や探索者協会を駆け巡りました。岡山県の探索者協会ではおそらく《千紫万紅》様だと予想はしてましたが、やはり当たっていましたね。こういった希少金属は探索者省が出す依頼の中に必ずあります。古くからある依頼なので見落としたのでしょうか?難易度は高く、報酬も良い筈です。探索者協会の買取り価格よりもかなり高額になります。ランキングの上位を狙うためにも覚えていて欲しい情報になります」
「古くからある依頼というのは、達成者がいないからですか?」
「宝石や希少金属に関しては、表向きは早い者勝ちのような依頼になっていますが、ほとんどなくならない依頼です。ミスリルの納品は過去に達成者がいたとしても依頼がなくなることはないと思います。他にもアダマンタイト、ヒヒイロカネ、オリハルコンは探索者省が出来た当時から探している希少金属です。まさかCランクダンジョンから出てくるとは思いませんでした。感服いたします」
この会話は岡山ダンジョンの探索者センターで記者会見をした後、ランキングで上位を狙うためにどうしたら良いかを考えているときに、中里さんから聞いた情報だ。Cランクダンジョンで達成できる依頼は少ないから、貴重な情報であった。真姫が依頼の中にミスリルの納品を見つけて悔しがっていたよ。
あれから一ヶ月経ち、こんなに早く希少金属に出会うとは思わなかった。まだ希少金属と決まったわけではないか?でも金色の宝箱だよ、ただの金属ではないでしょう。
姫路ダンジョンを完全攻略して、探索者センターに戻ってきた。買取り受付でカゴの中にドロップアイテムを入れていく。
今回は獣型の魔物と戦った。魔石はいつも通り完全ドロップするので大量にある。次に肉のドロップ品が大量で、次々にカゴをいっぱいにして、新しいカゴに入れていく。ウルフはよく見る肉の大きさだが、クマは一つ一つが大きい。クマの肉は美味しいのか?橘父さんと僕の母さんに渡して料理をしてもらおう。
最後に金属の延べ棒を出して、全部出しきった。僕はいつも通り見ていただけ、三人はご苦労様でした。
かなり時間がかかり、ようやく僕達の番号が呼ばれた。受付窓口に行くと部屋へと移動、ここのダンジョンでも最近は宝石の納品依頼を受けているからよく部屋への移動はある。でも今回は延べ棒のせいだよね。
「お久しぶりです。支部長の藤尾です。よろしくお願いします。早速ですが、魔石と肉の内訳からご確認ください」
魔石はウルフが一つ200円、クマが一つ300円だが数が多いからまずまずといったところだった。肉はウルフは倉敷ダンジョンより高く100グラム100円で、クマは100グラムで180円もする。クマはボア系のお肉と同価値の値段設定だ。ボアは美味しいから、クマへの期待が大きくなった。多めに残しておいても良いだろう。更にボス部屋だけにいた洞窟シルバーウルフと洞窟ビッグベアの魔石はそれぞれ300円と400円で買い取ってもらうが、肉は持ち帰ることにする。シルバーウルフは100グラム200円で、ビッグベアは100グラム300円もする。期待するなという方が無理である。
「最後に金属の延べ棒ですが、鑑定の結果アダマンタイトの延べ棒でした。こちらの買取り価格が一本で三千五百万円です」
ミスリルよりもアダマンタイトの方が高いんだね。今回はしっかり持ち帰って依頼の達成に使おう。でも、これより高額になるって大丈夫なのだろうか?普通に買取りしてもらっても三億五千万円だよ。今月はダイヤモンドのオークションでの収入があった。更にアダマンタイトでも………何に使おうかな?
「こちらのアダマンタイトは何処で入手されたかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
おっと、夢の中に行っていたよ。
「最終階層のボス部屋の金色の宝箱からです。最初のボス部屋がミスリルで最後のボス部屋がアダマンタイトですね。滅多に出ない希少金属を目にできて僕達はラッキーでしたね」
魔石を全部とシルバーウルフとビッグベア以外のお肉は半分買い取ってもらってダンジョンを出た。
アダマンタイトの延べ棒を持ち帰ると言ったときの藤尾さんの表情は凄かった。ここまでガッカリした表情ができる人はそうそういない。笑わなかった僕は自分で自分を褒めてあげたいよ。
何故僕達がアダマアンタイトの延べ棒を持ち帰ってガッカリするのかは最初は分からなかったが、こういった希少金属を取り扱うことが出来た場合、その探索者センターの実績として残るらしい。中里さんも僕達がマジックアイテムを買取りしてもらうようになって、マジックアイテムを取り扱った実績が残っていっているらしい。出世にでも影響するのかな?
拠点の家に帰り、繋ぐ札で僕の家へと移動した。最近の晩御飯は母さんの作ったものをほとんど毎日食べている。ウルフとクマの肉を出しておいた。研究しないとなといいながら母さんは喜んでいたよ。
すぐに真姫に連絡をする。
「アダマンタイトの延べ棒が出たよ。今持ち帰って来たところだ。どうすれば良いんだ?」
「早速希少金属の依頼が達成できるわ。ミスリルは悔しい思いをして皆に迷惑をかけたから、余計に嬉しいわね。私がもっとよく勉強しておけばと今でも思うわ。早速依頼の受付を済ませるわ。どのくらいの量があるのかしら?」
「延べ棒で十本、重さにしてどれくらいだろう?ちょっと待っててね」
台所のキッチンスケールで量ると一本で一キログラムあった。ミスリルの延べ棒は一本がもっと大きかったな。あれも一本で一キログラムだったのだろうか?
「一本が一キログラムで十本あるぞ。全部で十キログラムだな」
「重さは軽くても依頼達成になるからいいとして、また凄い依頼達成料金が貰えるわよ。一グラム40,000円よ」
「十キログラムでいくらになるんだ」
「四億円よ。ダイヤモンドは手数料が8パーセントに税金が15パーセント引かれたけど、今回は税金だけね。またお金持ちになったわね。おめでとう」
「おめでとうって………何処に納品するんだ?」
「今回も探索者センターで良いみたいよ」
「じゃあ岡山ダンジョンの探索者センターで納品しようか?今月中に納品した方が良いのか、来月にした方が良いのか、よく考えないとな。真姫に任せてばかりで悪いけど考えておいてね」
確かに探索者センターで買取りしてもらうより、依頼の達成料金の方が高額であった。難易度も高いから良い評価になるだろう。今月はランクのために宝石の納品依頼を十回分達成している。今月のランクを上げるべきか、来月もこの依頼一回だけでランキングの五位以内を目指すべきかは真姫に任せよう。
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