第109話 神戸ダンジョンの六階層から十階層を攻略
僕達は六階層の転移の柱に到着し、詩音と皐月が登録をした。その後セーフティーゾーンでお弁当を食べることにする。僕の腕輪から四つの弁当を出してそれぞれが選んだ。
「詩音、まだいけるか?無理はしなくて良いからな」
「メインアタッカーが二人いると楽っすよ。皐月の護りが安定してるし、いろいろと試しながら攻撃してるっす」
「皐月はどうだ?」
「ああ、楽しいぞ。今までにない充実感だぜ」
「楽しいって、絶対に無理はするなよ」
相変わらずの戦闘狂だ。正輝の圧倒的な戦闘力でまだ余裕がある戦いが出来ている。良い経験を積めているようだ。
「麟瞳、お前のお母さんの弁当は相変わらず美味いな。前に作ってもらった料理はすぐになくなったぞ。悠希も文句を言いながらも滅茶苦茶食っていたからな」
「悠希は僕に文句しか言わなくなったよな」
「すまなかったな。最初に俺がもっとちゃんとしてれば違ったのかもしれないな」
「いや、変わらないだろう。僕が弱かったから気に食わなかったんだろ。まあ、今更そんなこと考えてもしょうがないからね。六階層からのことを考えよう」
六階層からの上位種が混じるパーティでは、上位種は正輝と僕で相手をすること。他の魔物は出来るだけ詩音と皐月で相手をしてみることを決めた。皐月のやる気が爆上がりしていたよ。無理そうならすぐに助けに入るからね。
詩音と皐月は頑張ったよ。今できることをすべて使って対応していると、どんどん動きに無駄がなくなってくる。実践に勝る経験なしである。十階層のボス部屋に着いた。
「ここは僕の一撃から始めるよ。五階層のボス部屋と同じように五十匹ぐらいと考えていれば間違いないけど、やっぱり上位種が多くなっている。討ち漏らした上位種は正輝と僕が対応して、残りは全部詩音と皐月に任せるぞ。正輝、ヘルメットの性能は僕のと一緒なのか?」
「俺のはモデルチェンジ前のものだけど、ヘルメットの性能はほぼ変わり無いと思うぞ」
「それなら大丈夫だね」
「雷魔法の一撃って、ワクワクしてくるよな。話の流れからすると、凄い音がするんだよな」
「あまり期待しすぎないようにね。詩音と皐月も準備はいいか?」
「大丈夫っす」
「ああ、楽しみだぜ」
「じゃあ、二人は耳栓をしてくれ。僕が先頭で部屋へ入るぞ」
四人が部屋に入り、扉が閉まった。魔力を刀に流して溜めを作り、全力で横薙に刀を振るう。雷鳴が轟き、稲妻が走る。容赦なく魔物を襲い、魔物が消えていく。討ち漏らした魔物は数匹、詩音と皐月が駆けだしていく。最後のオークに詩音の槍が突き刺さり燃え上がらせた。
「よっしゃー!」
皐月の声がボス部屋に響き渡った。いつものハイタッチにも力が入っている。手応えを感じているのだろう。詩音も頬が赤くなり目が輝いている。ドロップアイテムを拾い。銀色の宝箱を僕が開けた。
「これって特級ポーションだよな」
「多分そうっすね」
「欲しい時にはなかなか出て来ないのに、アッサリ出てきたな。何か拍子抜けだよ。配分どうする?」
「これって特級ポーションなのか?」
「間違いないと思うよ。前回の時にじっくり見たからね。余所では言わないでくれよ」
「ああ、分かったよ。それより一撃が凄かったな。俺より広範囲に攻撃できるし、良いものを見せてもらったよ」
「マジックアイテムのおかげだよ。虹色の宝箱から出てきた刀なんだ。とりあえず、この部屋を出て次の階層に進もう。待っている探索者もいるからね」
十一階層の転移の柱に詩音と皐月が登録してから、ダンジョンを出てからのことについて話をする。
「まず僕が拾ったドロップアイテムを渡しておくよ」
収納の腕輪からドロップアイテムを出していく。以前に此処を探索したときには気付かなかったが、このダンジョンはスクロールが沢山ドロップするのが特徴なのだろうか?買った情報には載っていなかったが、結果を見れば明らかだろう。他にも武器やオークの肉もドロップしている。オークの肉は地味に嬉しいものだ。倉敷ダンジョンのボス部屋でしか手に入れられなかったもので、一回の攻略では量がしれている。今回は沢山オークを倒したからそれなりに数が多い。正輝と相談だな。
「スクロールの数が多いな。この配分はどうする?有用なものは取っておきたいよな」
「宝箱の中身もスクロールも、鑑定結果を見てみないとどうしていいか分からないっすよ」
「確かに、換金するのも勿体ないよな。麟瞳、鑑定してもらってから決めよう」
「分かったよ。僕はオークの肉が少し欲しいな。ストックが底を突きそうなんだ」
「好きなだけ持っていけば良いぞ。俺も二つぐらいは貰おうかな?前にお土産として渡したら喜ばれたんだよ。麟瞳が言った通りだったな」
ダンジョンを出て買取りに向かった。いつも通り部屋へと案内されて、そこで支部長が待っていた。まずは内訳票を見ながら普通のドロップアイテムを確認した後に、鑑定結果を聞く。
「スクロールですが、帰還のスクロールが二つと、火魔法が七つ、風魔法が五つ、水魔法が四つ、土魔法が三つ、氷結魔法が一つ、爆炎魔法が一つ、回復魔法が五つ、状態異常回復魔法が三つです。こちらがスクロールの買取り価格になります」
スクロールの買取り価格一覧という資料を渡された。持って行って良いそうだ。スクロールは沢山ありすぎて、どれが何なのかが分からなくなるな。きちんとメモしておいて収納道具から出さないと忘れそうだ。
「特級ポーションの買取り価格が五千万円で、繋ぐ札は値段が付けられませんでした。買取り希望の場合はオークションに出品することになります」
繋ぐ札って何なんだ?
「特級ポーションもオークションに出した方が良いですよ。前回出品された特級ポーションは二億三千万円で取引されましたから。やはり宝箱から出てきましたか?」
いきなり質問されていた。三人とも僕を見てくるからしょうがないね。
「ポーションは十階層の銀色の宝箱から出てきました。繋ぐ札って何ですか?五階層の金色の宝箱から出てきたんですが、どんな効果があるんですか?」
「流石金色の宝箱ですね。鑑定をしたら名前が繋ぐ札で、効果は札を張った扉どうしを繋ぐことが出来ると出ました。初めて確認された物なんですが、おそらく二地点で転移のようなことが出来ると思います。実際に使わないとはっきりしたことは言えませんが、他の人に知られると良くないかしれません。使い方によっては………ですね。これ以上は言わないことにしておきます。オークションに出品した場合はいくらの値が付くでしょうか?百億円や一兆円って言われても納得出来そうな気がします。今回の情報は探索者センターのトップには報告しないといけませんが、情報は漏れないようにします」
怖いよ。下手にオークションに出せないな。収納の中で永久保存かな?
四人で話し合った結果、正輝が帰還のスクロール一つと、回復魔法のスクロールを五つ、状態異常回復魔法のスクロールを一つ、そして特級ポーションを所有することにした。ついでにオークのお肉も二つね。
僕達は帰還のスクロール、氷結魔法のスクロール、爆炎魔法のスクロールを一つずつと、状態異常回復魔法のスクロールを二つ、そして繋ぐ札を貰った。僕達はこれからも遠征ばかりすることになる。こっそりとクランハウスと遠征先の小さなアパートを繋げば経費も節約できるし、食事にも困らないだろうという考えからだ。繋ぐ札の情報は誰にも漏れないようにしなければならない。因みにオークのお肉は十個貰った。当分困ることはないだろう。
懐が暖かくなった僕達は、正輝の奢りで晩御飯を食べるために中華街へと繰り出して行った。
僕は赤穂のDランクダンジョンに行くか、お昼を中華街で食べるか迷っていただけなのに、どうしてこうなったのだろう。まあ、詩音と皐月も喜んでいるから良い一日だったのかな?
中華街の食事を堪能した後に、正輝と別れて姫路の拠点の家に帰り着いたのは夜遅くなってからだった。明日は朝の鍛練の後はゆっくり休もうと思う。結構疲れたよ。
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